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■要約≪LEAN ANALYTICS前編≫
今回はアリステア・クロール/ベンジャミン・ヨスコビッツ共著の「LEAN ANALYTICS」を要約していきます。EricRiesシリーズエディタの1冊であり、構築・計測・学習における「計測」にフォーカスした内容となっております。本書はソフトウェアプロダクトの代表的な6つのビジネスモデルを例に挙げながら、「プロダクトグロースを志向していく中でいつ・どんな指標を測定・活用すればいいか」の理論枠組みおよび具体的なプロダクトマネジメントの方法にまで言及します。今回は前編ということでリーンアナリティクスの基本的な考え方・ベーシックな抑えるべき指標と各ビジネスモデル毎の要諦に関してフォーカスします。
「LEAN ANALYTICS」
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■ジャンル:開発管理・IT・経営
■読破難易度:低~中(データ活用・分析に何らかの業務で関わる機会があるorソフトウェアプロダクトに関わる仕事をしている人であれば馴染みやすく理解できると思われます。)
■対象者:・定量分析・仮説検証に関する理論を理解したい方
・事業開発・プロダクトマネジメントにおけるお作法を抑えたい方
≪参考文献≫
■リーン顧客開発
■要約≪リーン顧客開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■LEAN UX
■要約≪LEAN UX アジャイルなチームによるプロダクト開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■サブスクリプション「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル
■要約≪サブスクリプション「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル≫ - 雑感 (hatenablog.com)
【要約】
■なぜデータ解析・活用をしないといけないのか
・プロダクト開発・グロースをしていく中では高い不確実性と資源制約の中で、「顧客は存在するのか?」・「お金を払ってでも解決したい課題か?」・「マーケティングチャネルとソリューションは適切か?」といったプロダクトが成立・成長する為に抑えないといけない重要仮説があり、フェーズにより論点や解くべき問いは異なります。全てを網羅的に測定・抑えることは出来ない中で、仮説検証と意思決定の精度・速度を高めるという意味において、測定・注視する指標を定めて管理・運用する、重要指標を高める打ち手検証を行い続けるということがプロダクトグロースのミソになるとされます。
・プロダクト開発は「ビジネスとして顧客の課題を解決してマネタイズし、持続的に供給する・成長する」ということが絶対条件になるので、顧客価値とビジネス収益の両立を図る意味において「NSM(KGI)とKPIツリーの構築」、「運用しながらロードマップに重要アジェンダを記載して優先順位付けしながら解いていく」というのが具体的な手順で、その道しるべとしてアナリティクス環境の構築・運用は欠かせません。
■ベーシックな測定指標とフレームワーク
・ソフトウェアプロダクトのマネジメントにおいては顧客数・未来予測顧客数・離脱率・単価(LTV)などは健康状態を測る指標としてどのビジネスモデル・どのフェーズでも参照するとされます。加えて、月間ユニークユーザーや滞在時間なども打ち手検証などの際には頻出で算出する指標です。ファネル分析のように「ビジネスにおけるワークフローを可視化して測定できる指標を設定し、歩留まりを測定する・歩留まり変化に寄与する施策を検証する」というのがデータを活用したプロダクトマネジメントの基本手順となります。加えて、顧客セグメンテーション・ABテスト・コホート分析(異なる顧客群を時間軸における違いの変遷を捉えて因果関係・相関関係の仮説を炙り出すもの)・多変量解析なども欠かせないフレームワークとされます。
・また、プロダクトがPMFしないとグロースしないのでAARRR(獲得→アクティベーション→定着→収益→紹介)に寄与する指標を測定するのはよくあるやり方です。ビジネスモデルによりKPIツリーの構成要素は変わり、「測定環境構築」と「何をキーにするか」はビジネスセンス、戦略の妙とされます。リーンスタートアップ的には顧客数・定着率・単価の三指標を見るのが定跡とされます。
・アナリティクスをするにしても対象を定めないと意味がない。「何を測定してビジネスグロースにヒットするように仮説検証するか?」という問いに対する解をまとめるフレームワークとしてはリーンキャンバスが有効とされます。リーンキャンバスはビジネスモデルキャンバスに着想を得て、事業開発における仮説検証の際に参照する一枚絵として、問いと解を一覧化したフレームワークです。具体的な設問は課題(既存の解決策)・顧客セグメント(アーリー・アドプター)・独自の価値提案・ソリューション・チャネル・収益の流れ・コスト構造・KPI/KGI・競合優位性の9つです。
■代表的なビジネスモデル毎の抑えるべき指標について
・本書ではECサイト・SaaS・無料モバイルアプリ・メディアサイト・ユーザー制作コンテンツ・ツーサイドマーケットプレイスの6つを例に測定するべき指標とその理由について解説されています。
・ECサイトのような広告やアフィリエイトで顧客を獲得しその顧客に電子的・物的なものを届けるというビジネスモデルの構造においては継続利用率・単価などで顧客と商品をセグメンテーションし、「どこにフォーカスするべきか?」・「望ましい顧客はどのようなセグメントでどこから流入するか?」などの解像度を高める為に定点観測・指標を設定・運用することが要とされます。単価・継続利用率・プロダクトフェーズにより、「新規顧客獲得を頑張るのか」・「既存顧客の定着率や単価をあげにいくのか」どちらが望ましいかは決まるとされ、具体的には「●日以内再購買率(例:90日以内再購買率)」などを設定するのがよくあるやり方とされます。CVR・年間購入回数(90日以内再購入率をKPIとして合わせてみること推奨)・取引平均単価・購入プロセスにおける離脱率および原因分析・顧客獲得コストなどはこのビジネスモデルで常に抑えておくべき指標とされます。尚、ECサイトビジネスはロイヤリティと顧客獲得どちらにフォーカスするかでマーケティング戦略の方向は大きく変わるとされます。オンライン・オフライン融合の側面があるということを軽視してはならず、「ECサイトビジネスモデルにおける構造や示唆はマッチングプラットフォームビジネス(ツーサイドマーケットプレイス)にも通じるもの」とされます。
・SaaSは「フリーミアムで使ってもらい利用体験により課金、定着+活用促進でLTVUP狙うの」がプロダクトグロースの基本定跡になります。顧客数や歩留まりを定点観測し、目安値設けて良し悪しを測る、重要指標高める打ち手の仮説検証を順次するが基本動作となり、月間定期収益(MRR)をプロダクトグロースの定期観測にするケースが多いとされます。尚、顧客獲得と定着は軽視されがちですが非常に難しいものであり、フリーミアムや特定セグメントに集中するなど狙わないとうまく浸透しないとされます。プロダクトのユースケースや顧客セグメントを理解して、プロダクト開発進める中で「ホールプロダクト化して単価を上げていく」・「プロセス毎の顧客離脱防止に努める」・「オンボーディングに努めるデザイン開発・マーケティングマネジメント」がミソになるとされます。
・無料モバイルアプリの場合、チャーンや課金ユーザー率・LTなどを測定することが多く、アクティベーションするためのマーケティング施策・費用対効果測定などがよくある営みとされます。アプリ内課金か広告で稼ぐがこのモデルのグロースの王道で体験価値と時にトレードオフになるから悩ましい問題とされます。
・メディアサイトはスポンサー・クリック課金、掲載課金などで販促支援しマネタイズするのが一般的で、顧客価値を満たしながら売り手のニーズを満たすメディアマネジメントがカギとされます。広告でマネタイズしながら、スペースやコンテンツマネジメント、ユーザーと顧客セグメントの把握がグロースの要になります。スペース・コンテンツマネジメントは顧客体験・マネタイズとトレードオフになりかねず、「誰のために何を、どのように」のバランスと意思決定がミソとなるのでプロダクトマネージャーのような専属で責任を持つ役割を設けて管理するのが一般的とされます。
・ユーザー制作コンテンツとはWikipediaやNoteなどユーザー自身がコンテンツを制作し、プラットフォームをグロースさせていくようなプロダクトです。
エンゲージメントファネルと呼ばれる「コンテンツを作る人・作らない人」・「質の良いコンテンツ・悪いコンテンツ」という二軸でセグメンテーションして打ち手を施すというのが基本的な動作になります。アクティブユーザーを維持することと拡大することがプロダクトマネジメントのキーとなり、その為に「通知セグメント・タイミングの科学」や「いいね・シェアなどにインセンティブをはる」などしてアクティベーションし続けることが大事になります。
・ツーサイドマーケットプレイスはマッチングビジネスと呼ばれる「購入者と販売者の取引を促進するエンジンとなり、取引対価として仲介手数料をもらう」形式を採用します。ステークホルダーが複数存在し、時に二律背反になるようなことに対しての意思決定・管理をし続けるという難しさが付いて回ります。お金を使いたいグループにフォーカスするのがミソとされ、Amazonなどは顧客第一主義を掲げていることなどがわかりやすい事例です。
【所感】
・本書の副題はスタートアップのためのデータ解析と活用法ということで「資源制約・不確実性の中でどのようにデータを扱い、意思決定に昇華させていくか」という観点で非常に示唆に富んだ内容に感じました。本書で重点的に語られるKPIツリーの概念や定期モニタリングをして状態把握・構造特定・打ち手設定というのは部分的に自分自身の業務でも長らく行ってきましたが、理論的な規範を体得できた感覚を覚えました。
・「顧客がほしいものを把握し作り、売れ」というシンプルな原則において仮説の裏付けやファクトが大切で、その適切な収集・計測・分析に関する理論が本書のポイントです。あらゆる仮説検証・事業開発には投資回収の責任が伴うので「CFに寄与した」・「投資対効果が○○である」ということを説明して投資を獲得する・投資を証明・報告するといった手順から避けて通ることはできないと再認識しました。常に優先順位付けをして機能開発をしてプロダクトグロースを志向するのでメリットやインパクトがないと進まないものです。「プロダクトのコアとなる価値」・「顧客は誰か」・「何に課題設定して、どんな問題を解いていく・どんなゲインをもたらすのか」という問いに対する解は言語化し続けること・ビジョンや戦略を描き続けることは基本のお作法にして最大の原理原則であるということを改めて感じた次第です。
以上となります!