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■要約≪LeanとDevOpsの科学≫
今回はインプレス出版の「LenaとDevOpsの科学」を要約していきます。アジャイル開発・リーンスタートアップ・プロダクトマネジメントなどの技法が開発生産性・アウトカムにどのように影響するか・どんな技法が望ましいのかについてアンケートと統計を用いて導出した結論を体系的に論じている内容となっています。
「LeanとDevOpsの科学」
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■ジャンル:開発管理・組織マネジメント
■読破難易度:中(アジャイル開発・プロダクトマネジメントいずれかの本を1冊読んでくと読みやすいと思います。アンケートと統計手法に関しての解説をしているパートがあるので、前知識がなくても読むこと自体は可能です。)
■対象者:・開発組織の生産性のからくりについて興味関心のある方
・仮説検証型のコトマネジメント・横断型組織をリードする方
・組織設計・仕事の設計に関わる方
≪参考文献≫
■チームトポロジー
■エンジニアリング組織論への招待
■ユニコーン企業のひみつ
■要約≪ユニコーン企業のひみつ≫ - 雑感 (hatenablog.com)
【要約】
■DeevOpsとLeanの重要性
・ビジネス環境の不確実性とテクノロジーの重要性の増加により、ウォーターフォール型の不確実性をあまり想定しないスタイルの開発形式が少なくなり、仮説検証型の主に自社プロダクトなどで用いるアジャイル開発が主流になっていく中で、開発と運用が継続的に相互フィードバックして軌道修正していく(DevOPs)・随時軌道修正していく(Lean)形式でコトをマネジメントしていくことは組織のケイパビリティを高め、効果的に不確実性を解くという大きな効果をもたらす故に開発の支配的な考え方になりました。アジャイル開発・横断型組織によるプロダクトマネジメントが時代の要諦により、急激に必要視され開発生産性や新たな組織文化をどのように取り扱うかが論点となります。
・開発と運用が分断されることなく共通言語で対話・コラボレーションできるように組織設計・コミュニケーション設計することはプロダクトリーダーの役割であり、認知負荷削減・役割に応じたインタラクションモードをやり繰りするチームトポロジーはその手段、理論の一つとされるようになりました。
■ソフトウェアデリバリーのパフォーマンスを計測する重要指標
・継続的な仮説検証・改善・組織学習をしていくことが本書では望ましい開発組織のあり方とされ、デリバリーのリードタイム・デプロイの頻度・サービス復旧の所要時間・変更失敗率の4つを計測・改善するようコミュニケーションしていくことが本書では推奨されます。
・アジャイル開発では問題をユーザーストーリーに分解して、受入基準を満たしたら完了として、そのスピードでベロシティ・生産性を図るということを伝統的に行ってきました。ソフトウェアデリバリーのパフォーマンスを計測する指標の置き方によって開発と運用が分断された部分最適指標・行動促進になるということがよくあり、それを回避することが真の顧客価値と生産性をもたらすとされます。その為には組織設計・仕事の単位の設計・コミュニケーション設計・評価制度設計・組織文化形成に多くの時間を割き、プロダクトリーダー・プロダクトマネージャーが主導となり横断型組織・開発組織を鼓舞していく日々の継続的な営みが欠かせないとされます。
■開発生産性向上・仮説検証型組織運営のミソ
・本書では様々な開発組織へのアンケート・アウトプット・品質などの統計的な分析を通じていくつかの望ましい状態・行動を定義しています。具体的には業務プロセスの可視化・顧客フィードバックの継続的な活用・作業の細分化・チームで実験、レポーティングすることを奨励する・ダッシュボードによる仕事の相互の可視化・顧客価値に共感する、戦略理解に時間を割くなどが挙げられています。
・タスクを構造化・分割して継続的に軌道修正・フィードバックループを形成できるように仕事を設計する・役割分担を明確にして裁量権やオーナーシップを刺激するといったことを通じて、アウトカム最大化を目指すのがプロダクトマネジメントおよびプロダクトリーダーの重要な仕事になります。
・開発組織の人マネジメントの観点で可視化・定量化する・顧客中心主義をコアとした意思決定をし続けるなどを通じてチームのバーンアウトを回避するのは非常に大切な視点となります。共通認識が揃うから分権型組織や自由裁量が効果的になるのです。
■組織文化のモデル化
・基本前提・価値観・アーティファクチャの3つにより組織文化は構成され、コミュニケーションコストを最小化するために、仕事の指示命令系統・役割分担や価値基準を明確にするということは生産性の観点からバカにならないとされます。尚、上記を役割ベースで同期・非同期を時に調整するというのがチームトポロジーの考え方になります。協働体制・信頼関係・共通ビジョンの認識などが創造性やコラボレーションのスピード・質を向上させていくものであり、横断型組織をリードするリーダーシップはこの手の育成・構築にも手を入れることが大切になります。
・創造的で学習推奨の組織文化は高い心理的安全性・生産性・満足度をもたらしますが、適切な水準で維持拡大するのは相当に難しいものであり、部分最適・顧客志向欠落・競争意識欠落などの因子と紙一重とされます。変化に応じて革新を進める力と変化適応力が組織のケイパビリティの基礎になり、適切なインプット・不確実性の中でも顧客・顧客価値・戦略仮説などが明確に置かれた状態のカオスになっているかということが分かれ目になるとされます。
【所感】
・本書は開発と運用の一体化を意味するDevOpsと組織設計についてフォーカスした珍しい内容で、これまでプロダクト分野で学んできた理論や知識が有機的に結合・腹落ちする感覚を得ることが出来ました。組織文化・評価制度・仕事の設計などプロダクトリーダーが開発生産性や組織ケイパビリティがどうあるかを担う要素を強く握るということを再認識しました。それ故に、理論や手順に忠実にありリーダーシップを発揮すること・組織の継続的なメンタリングとオーナーシップを刺激していくことに日々手を入れていくことが仮説検証型のコトマネジメント・組織をリードしていく為に大事であるという確信を持てました。
・アジャイル開発やプロダクトマネジメントのフレームワークや価値基準がなぜ優れていると言えるのかということが様々な角度からの批判的な検証・分析により結論として持ち込まれており、非常に学びが深かったです。また、本書の内容は半分程度が組織マネジメント(組織設計・組織文化形成)に関する力点も多く、プロダクトリーダーやマネジメントがどのようにコトと人をマネジメントしていくのか、その価値基準・時間軸などを考えさせるきっかけになる内容が多かったのが印象的でした。
・一見、従来型の仕事のスタイルや人間の直感的な性質に反する営みをしていく仮説検証型のコトマネジメントは難しいからこそ、今やっていく意味があるのだろうという確信を本書を読んで持ち、実践ベースで自分の技能を磨くことと継続的なメンタリングを通じて組織ケイパビリティを高める、それを通じて高い組織成果を出すという実践経験を積み上げて更なる高みを目指したいなと思った次第でした。
以上となります!