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■要約≪日本型PMIの方法論≫

今回はプレジデント社の「日本型PMIの方法論」を要約していきます。PMIの概念の解説に始まり、主に上場企業が中堅・中小企業を買収して成長・シナジーを創出していくために抑えるべきポイント・具体的な業務について体系的にまとめた本です。これまでアカウンティング・ファイナンスについては実務関連性が乏しいということで最低限のインプットにとどまっていましたが、PMIの成功をリードするというロールを急遽担うことになったことに伴い、全く土地勘がわからず本書に辿り着いた次第です。


「日本型PMIの方法論」

■ジャンル:ファイナンス経営学

■読破難易度:低(非常に平易な言葉で記述されており、サクサク読むことが出来ます。実務の事例なども豊富に記載されており入門書としてベストです。)

■対象者:・PMIの概要を理解したい方

     ・成長戦略・シナジー創出に興味関心のある方

     ・チェンジマネジメントに従事する方全般


≪参考文献≫

■90日で成果を出すリーダー

■要約≪90日で成果を出すリーダー≫ - 雑感 (hatenablog.com)

管理会計・入門

■要約≪管理会計・入門≫ - 雑感 (hatenablog.com)

コーポレートファイナンス戦略と実践

■要約≪コーポレートファイナンス 戦略と実践≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■企業戦略論(下) 全社戦略の概要

■要約≪企業戦略論(下)≫ - 雑感 (hatenablog.com)


【要約】

■PMIの定義

・M&Aは事業継承だけでなく企業成長の手段としてもあり、買収後の統合PMIがうまくいって初めてシナジーが生まれます。M&Aまでは経営企画財務などが担い、統合後のシナジー創出は別部門がやることが一般的になります。日本電産のようにM&Aがうまい会社でも買収後のPMIが8割くらいの成果に寄与すると表現されます。PMIは100日程度かけてシステムやビジネスの統合・リエンジニアリングをしていく営みになります。

・PMIはアップセリング・クロスセリングを可能にする、システムを共有化してコストカット&規模の経済追求などが鉄板のやり方です。上場会社が中小・中堅企業を買う場合には連結決算・内部統制の仕組整備が主な論点になりやすいです。業務フロー・情報フローを可視化して指示命令系統や役割分担の把握・統合の際にどの要素を組み込んでいくかという観点が必要になってきます。

属人的なやり取りからナレッジ・文化などを統合して組織的な営みに昇華していくというのがPMIの狙いですが、これを実際にやるのは相当に難しいことで関連実務を担う人のリーダーシップやドメイン理解が欠かせないとされます。M&A後のPMIは狙わないとシナジー創出や成長戦略を描くことは難しく、そこに付随する業務・合意形成プロセスはかなりの難易度を誇るとされます。PMIはガラパゴス化した事業や会社を組織経営できるようにしていくことが主な狙いとなります。PMIの際の不安毎や関心毎はお互い違うこともあるので、コミュニケーションをしてすり合わせ・整備して上位戦略や概念で合意するようにしていくことが大切とされます。経営を担う人材の不足を狙いとしたPMIが日本では多く、海外の場合はバリューアップのためのプロジェクト管理の側面が強いPMIが多いようです。


■PMIの重要アジェンダ・大切な感覚

予算管理・内部統制システム・戦略・計画の文書化・図示化がPMIプロセスにおける売手企業側へ手入れをする代表的かつ超重要アジェンダとされます。買手が上場企業である場合、連結子会社のPL管理は必須業務になります。また、売手企業がオーナーの属人的な感覚による経営管理がなされていた場合には早急な管理会計の仕組導入・KPIツリーの策定などを売手ボードと連携しながら急ピッチで整備していくことが欠かせません。その際には既存の業務フロー・指示命令系統の事実把握による事業運営の要諦を抑えるプロセスが欠かせません。(状態を把握せずいきなりトップダウンで変容するはご法度とされます)

・売却後の従業員の雇用やコンディションに対して売手が不安になることはよくあることであり、だからこそビジョン戦略インナーコミュニケーションなどのインフラに手入れをして運用していくことが変革期には欠かせないとされます。

・PMIにおいて最大の関門になるのは企業文化の融合とされ、組織の粘着性や感情の問題を引き起こします。PMIプロセスにおいてはもはや文化の融合ではなく、新しい文化を生み出すダイバーシティや異質さの許容、それに付随する対話をしていくということが大切であるとされます。一方の文化の異質さは他方からみてもそうであるということを認識し、上位概念であるWhyやWhatについて対話をして共通認識をもっていく・ロードマップやリーンキャンバスのような中長期アジェンダ可視化ツールを運用するなども大事なプロセスとされます。

業務リストの作成・担い手や指示命令系統の把握などはPMIをしていく上で致命傷にならないように手入れをする際の鉄板とされ、現場ヒアリング・構造化に徹することが大切になります。そのフローはコンサルのような第三者に委託するというやり方が一般的とされます。加えて、絶妙な均衡が保たれている人間関係やコミュニケーションについても把握して組織経営に移行していかないとシナジーが生まれない部分に足引っ張られるなどの動きが出てしまうので要注意です。


【所感】

・M&A前後に掛かるPMIについては言葉の定義すらおぼつかない程度の理解であったため、非常に重要で論点が多岐に渡る業務であるということを理解できたのは非常に大きな収穫でした。全社戦略を実行して実際に成長やシナジーを創出することが如何に難しいかということを思い知らされました。

・実務における業務フローや指示命令系統の特定・統合ビジョンの策定・WhyやWhatなど上位概念で対話・合意形成をしていくというプロセスは横断型組織をリードする際の要諦に通じるものであり、リーンキャンバスやロードマップなどのフレームワークの重要性と奥深さを再認識しました。加えて、実務者としては移行期~統合完了後のインナーコミュニケーションのシステム設計・運用が馬鹿にならないなと感じた次第です。変革というのは避けて通れませんが、多くの人にとっては既存のメンタルモデルを変えて変化に適合していくということはストレスでしかなく、時に混乱を招くものです。それでも恩恵がある、意味があるということや自分達の組織や事業の目的を再確認するというコミュニケーションは意図的に整備していかないと成しえることは難しいんだろうなと感じた次第でした。


以上となります!

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