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【#7】肌の色は違うけれど

朝起きて、電気と水道が通っているかを確認する。嬉しい気持ちで1日をスタートできるかどうかが、蛇口とコンセントで分かる。よかった、今日も嬉しい。あるものに目を向けるとは、こういう小さな幸せに気づくことなのだろう。当たり前は当たり前でないし、その当たり前は失って初めて気づくことが多い。失わなくても気づけるようになるには、何が必要だろう。

朝7時半に家を出て、歩いて学校に向かう。だいたいこの時間がちょうどいいことが、2週間で分かってきた。道中は10分ほど。この道には信じられない量のカタツムリが存在している。一生見るカタツムリの量のゆうに10倍は超えている。タチの悪いことに、このカタツムリ達はソロモンの人たちによってほとんど踏み潰される。ゆえにハエがたかる。鳥肌が立つような羽音は、朝の朗らかな気分を少し下げさせる。

 
任地アウキに来てからの2週間は、授業参観という形で全クラスの授業に入らせてもらった。この学校は小学1年生(Year1)から6年生(Year6)までが2クラスずつ、加えて日本の幼稚園5歳児クラスにあたるPre-Primaryが3クラス。全15クラスある。先生は15人と校長先生。ギリギリ学校が回っている、いや回っていないかも。

いろんな教育事情も垣間見えた。2年生までは鉛筆と消しゴム、3年生からはボールペンと修正液でノートを書く。でもこの学習用具がまず揃わない。定規や色鉛筆となると、持っている児童の数はさらに減る。教科書も予想通り足りない。先生がコピーをしたり、児童3〜4人で共用で使っていたりする。教室に電気やエアコンなどはついておらず、休み時間も少ない。

それでも、先生は土日に時間を割いてまで準備をしているし、子ども達もなんとか授業に取り組もうとしている。こんな環境でとても、とても頑張っている。すごいよ。

現状僕が任されているのは、体育の主担当と算数のアシスタント。明日から体育の授業はスタートする。1クラスずつ、30分間。2週間に1回。正直この頻度では、課題を発見して打ち手を施し、その改善をデータで測り、成果を上げる・・・なんてことはできない。2ヶ月で4回の授業しかできないのに、何が向上するというのか。何を求められているのか、まだそれには気づけていないけど、愚直に1回1回の授業をやっていくしかない。子ども達にとっては、貴重な1回の授業であることに変わりはないからだ。

  
求められているものを見出せていない以上、「なぜ自分はここにいるんだろう期」がやってくるかもしれない。それでも、ソロモンの人たちが自分に対して無関心でないだけで今は十分。

村を歩けば、「元気か?」と声をかけてくれる。新鮮なココナッツを木に登って取ってきて、「ほら飲んで!」と言ってくれる。何回も間違えるのに、優しく現地語の授業をしてくれる。教えたばかりの「オハヨウ!」を夕方でも使って挨拶してくれる。そうやって、村の人たちが関わってくれる。それだけで、ここにいる意味がある。

「Kazukiは肌の色は違うけれど、同じ一人の人間だ。怖がることはないよ」

初めて入った教室で、何人かの子ども達が僕を恐れていた。確かに、知らない世界というのは、ある種恐れにもなり得る。そんな中、担任の先生が咄嗟に放ったこの言葉。間違いなく、僕自身の気持ちも和らげてくれた。関わりの中に自分を入れてくれたのが、とても嬉しかった。やっぱり、なんとか力になりたい。

まだまだ非日常の毎日を過ごしている。もう少し日常になってくれたら、生活は落ち着いて楽になるだろうし、活動にも集中できるだろう。でも日常になってしまったら、気づけなくなることもたくさん出てくる。そうなる前に、今感じている全てを心の中で留めておきたい。覚えていられるかな。

◯おまけ

優しい大家さんご夫妻。常に味方でいてくれる。
パチンコで鳥を狙うのは、どうぶつの森の世界
最近のベストミール
「ハンバーグと魚のアラのすまし汁」
本物の羽で仕上げるのはレベルが違う・・
サ、サスケ!初めて日本文化を見た
カヌーで移動するのもよく見る光景
ポツンと一軒家
シェルマネー(貝のお金)の製造を見せてもらえた
完成品。でかい。
木の棒で洗濯ロープを支える。こういうの好き
日曜のミサの後は、いつも誰かがご飯をくれる
日本の船は飛び込み台に使われているみたい。

今回はここまで。


福岡の小学校で3年間勤めた後、JICA海外協力隊2024年度2次隊になる。派遣国はソロモン、職種は小学校教育。現在はマライタ島アウキにある小学校で活動中。人生の目標は「いいパパになること」。



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ヤマトカズキ
読んでいただきありがとうございました!