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【#8】先生の答えが間違っている...?ソロモンの教室で感じた葛藤と学び

他の太平洋諸国はサンゴ礁の島国が多いみたいだけど、ソロモンは火山の隆起でできた島国。この違いは、もたらされる農作物や生育環境、産業に影響を与えている。火山の恩恵を受けたソロモンでは、鉱物資源と森林資源が豊富で、おまけに海に囲まれているため海洋資源も豊富だ。今日もマーケットには野菜やフルーツ、魚がたくさん。今晩のご飯は何にしようと考えている時間は、けっこう好き。

食事で困っていることは、大好きなお肉をあんまり食べられないこと。イスラム圏でもヒンドゥー圏でもないのに、豚肉と牛肉が食べられない。正確には店頭にほぼ並んでいない。あるのは大量の冷凍鶏手羽だ。大家さん曰く、「お肉食べたいなら知り合いのところに連絡するよ!」と教えてくれた。屠殺して手に入れるということだろうか?今度また聞いてみよう。

至福のおやつ時間。パイナップルタイム。

見えてきた学校のリズム

学校での活動も、なんとなくイメージが持ててきた。ソロモンの学校は4学期制。1学期は1月から3月までの10週間で、もうWEEK5が終わったところ。つまり学期の折り返し地点である。

朝8時前に学校へ行って、「オハヨウ」運動を展開。午前中は各クラスの授業アシスタントをして、お昼から体育の授業を2コマやる。放課後は授業準備と先生たちとのお喋り、んで16時に終了。こんな1日。

「算数と体育の授業をやってほしい」と校長先生から言われている。でも、中途半端なタイミングで授業に関わるのは申し訳ないので、体育だけ授業をしている。算数は授業アシスタントのみにしてもらった。ソロモンの教育制度もそうだし、評価の観点、成績の付け方をまだまだ知らない。それを勉強してからじゃないと、授業はできないとさえ思っている。その点、体育は成績表に載らない項目なので、かなり自由にやらせてもらっている。

体育の授業計画。各クラス第一回目はラジオ体操。

マイナスの壁にぶつかる教室

5年生の教室にいた時のこと。教科は算数、単元は正負の数。小学校でマイナスの概念が登場していた。日本だと中学校1年生のレベルだ。ちょうど計算問題の演習時間で、担任の先生も「分からないところはKazに聞いてもいいからね〜」と語る。その言葉を受けて教室を回っていると、子どもたちがマイナスの概念を難しいと感じている様子に気づく。「9-(-5)=」や「4+(-7)=」の計算スペースは、空白のままだった。

教科書ではどんな教え方してるのかを確認してみる。なんと、「9-(-5)=」のような、負の数を引く問題は解法が載っていなかった。先生の授業ノートで教え方を見てみようとした時、思わず目を疑うような内容が書かれていた。

よく見てほしい

「9-5=4」の隣に、「9-(-5)=4」と書かれていた。ん?間違えてるな。しかも、子どもと同じ間違えやん・・。この国では「9-5」も「9-(-5)」も同じ答えになるのか?いや、ならない。数学は世界共通だ。よく見ると、「-4-(-1)=-5」ともある。そういえば、この前4年生のクラスでも「12×6=74」と先生が教えていたな。これは。。厳しいな。

間違った答えを教えるわけにもいかないので、「ねえねえ、「9-(-5)」の本当の答えは14だからなっ!」とささやいて回った。「先生の答え間違ってるから!14だから!」と黒板の前に立って言いたい気持ちもあったけど、それでは先生のプライドを傷つけてしまう。立ち回りが難しかった。

その先を見据えて

自分で教えちゃったほうが、圧倒的に早いし、分かってもらえる自信がある。でもそれをやってしまったら?と考える。開発支援における「魚を与えるか、魚の釣り方を教えるか」論と似ていて、自分が直接教え続ける限り、自分がいないと回らない構造が出来上がってしまうと思った。

ソロモンでの使命は何だろう。目に見える成果としての基礎計算力の向上と、数字には表れにくい勉強へのモチベーション向上。どちらの成果も大切だし、短期的・長期的に両方を追っていくことは可能なはずだ。どちらかに偏るのではなく、両輪が必要。自転車をぐんぐん前に動かす時のように。

子どもたちの「この問題分かった!」を増やしつつ、「もっと学びたい!」につながるような仕掛けを思いっきりたくさん作る。それが、ソロモンでできることなんじゃないかな、と今は思う。さて、この先どう変わるのか。1学期は現状を把握する期間。でも2学期への準備も、静かに、しかし確実に始まりつつある。

◯おまけ
休みの日に、調味料棚を作りました。いや、ほぼ作ってもらった。

地元の大工さんのところへ。
適当な長さにギコギコ
釘打ちで組み立てます
丁寧に研磨まで
職人技が光ります
完成!料理がはかどる!うれしい!
今度何かお返しにいこう。

今回はここまで。


福岡の小学校で3年間勤めた後、JICA海外協力隊2024年度2次隊になる。派遣国はソロモン、職種は小学校教育。現在はマライタ島アウキにある小学校で活動中。人生の目標は「いいパパになること」。



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ヤマトカズキ
読んでいただきありがとうございました!