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【#3】Village Stay

ソロモンに限った話ではないと思うけど、協力隊の生活レベルは現地人と文字通り桁違いだ。ソロモンは開発途上国の中でも後発に分類される国で、人間開発指数のランキングでは大洋州最下位、全世界でも156位に位置する。人間開発指数とは、「教育水準」「健康・寿命」「所得水準」の観点から評価した指標らしい。南国の豊かなイメージがあるソロモンでも、色々な水準が低い。義務教育制度はないし、医療事情もすこぶる悪く、物価は高いのに給料は安い。どんな生活、どんな人生を歩むことになるのだろう。

協力隊はというと、ソロモンの人は高価すぎて飲めないマラリア予防薬を支給され、厳格な安全基準を満たした家にのみ住むことが許されている。その家賃はソロモン人の月額給料数ヶ月分、下手したら年単位分だ。命あっての協力隊活動であることを重々承知していても、まだこの特権的にも思える協力隊の立場に慣れていない。言葉にはできない、むずがゆさがある。

ソロモンの人たちはワントク文化の中に生きている。ワントク、One Talk。同じ民族、言語、地域の人々が相互扶助の関係性を持っていて、コミュニティの中で助け合っているそうだ。生活にも慣れていけば、そんなワントク文化をどっぷり体験していくのだろう。

でも、今の自分は、そのワントクの中に入っていける想像ができていない。どうしても、「わたし」と「彼ら」の世界観になってしまう。その理由はすでに記したとおり、生活している目線が違いすぎるからだ。そしてそのギャップをVillage Stay Programでも感じてきた。

      
 
首都ホニアラから西に進むこと車で1時間半。相変わらず、いや、いつも以上のデコボコ道の先にあったのが、電気・水道・ガス・電波が通っていない、ほぼ自給自足で暮らすタンボコ村だった。この村で3泊4日、ワントク文化に混ぜてもらいながら一緒に過ごす。

自然環境は非常に豊かだった。たくさんの南国フルーツに、キャッサバなどの芋類。魚やチキンは食べる時に近くでとって捌く。ソーラー充電した豆電球で夜の談笑時間を照らし、井戸水や川の水で日常に必要な全ての水をまかない、食べ終わったココナッツのオイルを利用して火起こしと炊事をする。素晴らしい生活力と思わざるを得ない。

生活風景を眺めていると、上裸や裸足で過ごす子が少なくないことに気づいた。気温が高いからなのか、サイズの合う衣類がないからなのか、その理由はわからない。そんな彼らの肌には、成虫のハエや蚊が常にまとわりついていて傷口もある。僕は事前に「虫除け対策を万全に」と言われていて、日本の虫除けスプレーを持参し、長ズボンを履いていた。寝る時には蚊帳と蚊取り線香のW装備。それでも多少、気を抜くと蚊に刺されてしまうくらいの環境だ。村の一部の人たちは蚊帳の中で寝ているようだけど、多くはそうでなかった。

海外協力隊はJICA組織に属している以上、JICAが定める規則やルールに従わなければならない。特に、健康と安全管理については、コロナ禍以降強化されていると話を聞いた。二重ロックがついた部屋で、蚊帳の中に寝ている「わたし」と、家壁もなく屋根しかない場所で寝ている「彼ら」の違いを、どうしても感じてしまった。その違いは楽しめる違いではなく、モヤモヤが残る違いだった。これはこの村だから、という話ではなさそうで、ソロモンの一般生活を基準に置くと、日本の協力隊の生活レベルはすこぶる高い。

協力隊の身分は間違いなくありがたい。と同時に、これほどの健康と安全管理をしなければ、協力隊としては活動ができないとも言える。命あっての協力隊、その命の保証にはとてつもない税金も注ぎ込まれている。

「Kazがこの島に来たぞ!」ともっと現地の人に顔と名前を知ってもらいたい。その方が活動が上手くいくと思ってる。でも不特定多数に情報を知られることは、安全管理上はリスクだ。

生まれたルーツが日本にある以上、ソロモンにおいて外国人である事実は変えられない。でも、2年間その環境や文化に溶け込むことで、「よそから来た日本人」という見られ方から、「私たちと同じ一人の人間、Kaz」に変えていくことはできる。それができて初めてフェアな関係性を築ける、そこでやっと活動が進むとさえ思う。

海士町で感じた、「泥臭さのある活動をしたい」という気持ち。もうそんな協力隊像は古いのか?理想すぎるのか?この問いの答えを考え続けています。

◯おまけ

バナナのココナッツ煮
レインタンクから溢れる水でシャワーを浴びる少年
ココナッツオイルと木材で火起こし
天然のレモンティー
丘の上の完熟マンゴー
すべて村のもので作るキャッサバプディング
少年の足にたかるハエ。
この傷口はずっと治らなそう。
ココナッツの葉の茎をトングにしてた
魚が食べたいときは釣りへ
総じて、サステナブルな生活だった

今回はここまで。


福岡の小学校で3年間勤めた後、JICA海外協力隊2024年度2次隊になる。派遣国はソロモン、職種は小学校教育。現在は首都ホニアラにて現地研修中。人生の目標は「いいパパになること」。



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ヤマトカズキ
読んでいただきありがとうございました!