よよこ、39歳の決意
よよこは39歳になっていた。
家の近所を歩いていたとき、某ファストフードの店舗の前を通りかかった。
ふと求人広告に目をやると「39歳まで」とあった。
自分に与えられたチャンスが終わりに近いと感じた。
働きたいと思っても、年齢が邪魔をする年齢に突入したのか。
チャレンジしたいと思った。
憧れているブライダルの会社があった。
洗練されたフォトグラファー集団。
このメンバーになりたい。
カメラマンの募集は随時行われていたがそこにも
「39歳まで」と、あった。
よよこが40歳を迎える4日前のことだった。
「カメラマンの募集を拝見しました」
残された日数が4日とあれば迷っている暇はない。
即、電話をかけた。
「あの、あと4日で40歳なのですが・・・」
おそるおそる伝える私に
「大丈夫ですよ〜。ぜひいらしてください」
と明るくやさしい返答。
ほっと胸をなでおろし、面接へと向かった。
面接なんて何年ぶりだろう。
履歴書には指折り数えて経歴を書いた。
ドキドキしながら黒スーツにブラウスという
まさに”リクルートスタイル”で面接に向かった。
出迎えてくれたのは、電話で明るくやさしく応対してくれた女性。
ほっとしつつ椅子に座ると、年のころよよこと同じくらいのカメラマンであり社長の男性がラフな”いでたち”でやってきた。
ドキドキしながら持参した手作りのポートフォリオを手渡した。
実はよよこは30代のとき、カルトナージュと手製本にハマっていた。
よよこの母は洋裁が得意で、服はなんでも作ってくれた。
そんな手先の器用な母から受け継いだ遺伝子をよよこは工作に生かした。
手製本で準備したお気に入りのポートフォリオだった。
その甲斐あってか?
ポートフォリオをみた社長はその場で採用を決めてくれた。
ふと、
黒スーツとブラウスに身を包んだ自分がなんだか気恥ずかしくなった。
規律に囲まれた中で撮影をしてきたよよこだったが、
クリエイティブなその空間には
規律を超える豊かな創造性を感じたのだ。
よよこはここから写真への概念が大きく変わることとなった。
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『よよこ、プロカメラマンになる』
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