時には立ち位置を変えて新しい刺激を
少し前、私はダンスのステージに上がった。
本当はその月の仕事が忙しいから、と断っていたステージだったのだが、欠員でもう一度誘われ出ることになった。
私はここ最近センターポジションで踊らせてもらっていたが、今回は休むことになった人の立ち位置である右の一番端で踊ることになった。
いざ本番。ステージに上がると「あ、端ってこんなに視線がないんだ」と気付いて少しショックを受けた。
ステージで踊るのはたった2曲、10分もないのだが、ほとんどの人に見られずに終わるのは悲しいなと思い、全力で踊ろうと決めた。
その時だった。
1人のおばさまが私を見つめているのに気づいた。
踊りの合間に目が合う。
もしかして何か感じ取ってくれている?
そう思うと、その人に向けて踊りたくなった。
最後まで大衆の目を奪うことはなかったけれど、1人のおばさまの視線を注がれ、私は幸せだった。
そして自分のステージが終わって他の人のステージを見に観客席にいた時だった。
なんとさっきのおばさまがメイクをして着替えて踊っているではないか。
つま先から頭の先、指の隅々までに心を込めて踊っているのが見えた。そして表情もこの上なく繊細で優雅で優しい。
私の視線は釘付けになった。
それと同時に、この方に踊りを見てもらえていたんだと思うと、じんわりと嬉しさが湧き出てきた。
「(あなたの頑張りを)見てる人は必ずどこかにいる」
私が生きる上で大事にしている言葉の一つ、大学のゼミの先生からもらった言葉を思い出した。
そうだ、今日もこうやって私の踊りを見てくれる人がいた。センターで踊ることだけが全てではない。
違う立場になってみるというのは、思考に刺激を与えてくれる。そして何事も学ぶ上で柔軟に物事を捉える機会を持つことはとても大事なことなんだと再確認した出来事だった。
私はこれから、どんなポジションであろうが、役割を全うし自分の思うままに全力で踊っていきたい。