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難読人名。

年の瀬ですが新しい年の準備は進んでいますか。正月になると遠くにいる親戚などと顔を合わせる機会が増えます。親戚の子ども達の成長を見るのも正月に集まる醍醐味と言えるでしょう。この時期に大人の間ではお年玉を渡す都合上「子ども達の名前を正しく読み書きできるか問題」が発生します。普段、名前で呼んでいるのでポチ袋に名前を書くとなると漢字が思い出せない、年賀状で名前を確認したけれど読めないなど「子ども達の名前を正しく読み書きできるか問題」が世の大人たちを悩ませる時期でもあります。そんな問題を踏まえたわけではありませんが2025年5月から「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」が施行されます。今回は戸籍の振り仮名制度について学んでいきたいと思います。
 

なぜ戸籍に振り仮名

行政機関が保有する氏名の情報の多くは漢字となっており、外字が使用されている場合にはデータベース化の作業が複雑となっているため、特定の者の検索にかなりの時間を要しています。また、金融機関等において氏名の振り仮名が本人確認のために利用されている場合があり、一人で複数の振り仮名を使用して別人を装いながら各種規制を潜脱するといった事が考えられます。そのため、行政のデジタル化の推進に当たり、氏名の振り仮名を一意のものに特定することによって公証するというニーズが高まっていました。これを受け、デジタル社会形成整備法附則第73条(2021年5月19日公布)において「政府は、行政機関等に係る申請、届出、処分の通知その他の手続において、個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを利用して当該個人を識別できるようにするため、個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを戸籍の記載事項とすることを含め、この法律の公布後一年以内を目途としてその具体的な方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされました。これによって戸籍法や住民基本台帳法などの一部改正が行われ、今後は氏名の振り仮名が公証されることになり、官民問わず様々なサービスにおいて本人確認事項として振り仮名を利用することが可能になりました。
 

今後の振り仮名が記載されるまでの流れ

1. 戸籍に記載される予定の振り仮名の通知
市区町村から、住民票の情報を参考にして作られた「戸籍に記載される振り仮名の通知書」が、原則として戸籍の筆頭者宛てに郵送されます。
 
2.氏や名の振り仮名の届出
通知書に記載された振り仮名が、現に使用している読み方と異なる場合には、その振り仮名の届出が必要。届出の期間は改正法の施行日から1年以内となります。
法の施行日以降に出生届や帰化届等により初めて戸籍に記載される方は、届出時に併せて氏名の振り仮名を届け出ることとなります。
 
3.市町村による振り仮名の記録
1年以内に届出が無かった場合、通知した振り仮名が戸籍に記録され、1回限り振り仮名の変更の届出ができます。届出した振り仮名を変更したい場合は家庭裁判所の許可が必要となります。
 

読みづらい名前「キラキラネーム」は?

新しく振り仮名を記録するにあたりどういう読み方であれば認められるか、法務省が全国の自治体に示した審査基準案によると「社会を混乱させる」「社会通念上相当でない」という読み方でない限り、届け出を受理してよいとされています。漢字本来の読み方とは異なっていても、一定の関連性を説明できれば受理されるとみられ、いわゆる「キラキラネーム」も広く許容されると見込まれています。審査基準案によると「社会を混乱させる」「社会通念上相当とはいえない」読み方について、具体的には「漢字と反対の意味になる」「漢字の意味や読み方との関連性を認めることができない」「子の利益に反する」といった場合が該当するとし、これらに当たらない読み仮名であれば、市区町村は届け出を受理してよいとされています。判断に迷った場合は、各地の法務局が市区町村の相談に乗り、あまりにも奇抜な読み仮名については、届け出人に読み方の理由や、漢字との関連性の説明を求めることも想定されています。
 

おわりに

『世界で一番素敵な言葉』という歌のなかで「あなたが誰かと出会った時に 必ず聞かれる最初の言葉 自分より人のためにあるもの それがあなたの名前です」とい歌詞があります。どこかに行ったとき、誰かに会ったとき、必ず名前が前面に出てくることもあり、相手にとって“読める”というのは名前にとってとても重要なことなのかもしれません。行政のデジタル化基盤整備の促進、本人確認情報としての利用、各種規制の潜脱行為の防止などから今回の戸籍への振り仮名の記載が法制化されましたが、スタート時の混乱は予想されるものの、将来的には自治体の事務処理負担を軽減となることから、基礎自治体と関わる私たちの生活にも大きな変化をもたらします。そのためにも新しく始まる戸籍振り仮名制度の背景やメリットを正しく理解することで、円滑な行政手続きが可能で快適な社会になると思います。

おまけ
人の名前で迷うのは「小沢」「小山」など。一見誰でも読めそうなのだが「お」なのか「こ」なのか。聞いてみないとわからない…。名前の順で郡司(ぐんじ)の前に小山(おやま)さんがいて、後ろに小沢(こざわ)さんがいたことがある…。振り仮名制度にはそういった混乱も避けるために期待したい。余談ですが真人は「まさひと」と読みます♪


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