二元代表制と地域主権
注目されていた兵庫知事選挙は、県議会から全会一致で不信任決議を受けた斎藤元彦知事が再選を果たしました。不信任を受けて失職した知事が再選されたのは2002年の長野県知事以来の2例目だそうです。県議会での百条委員会でのパワハラ疑惑調査から「県政は停滞と混乱を極めている」と全会一致で不信任決議を受けた斎藤知事は、政党の推薦を受けずに、ハラスメント研修の実施や再発防止策、県立大学の授業料無償化など「改革の継続」をSNSで積極的に活用しながら政策を訴え、県内の首長の多くが推薦する候補などを抑えて見事再選を果たしました。今後、不信任決議をした県議会や他候補を推薦していた市町村長にどのように対応していくのか注目をしていきたいと思います。二元代表制が敷かれている日本において首長と議会について少し学んでいきたいと思います。
二元代表制とは
地方自治体では、首長と議会議員をともに住民が直接選挙で選ぶ「二元代表制」という制度をとっています。これに対して国は、選挙された国会議員で組織された国会が、内閣総理大臣を指名し、内閣総理大臣が内閣を組織する「議院内閣制」となっています。
執行機関
自治体の執行機関である長は、普通地方公共団体を統括しこれを代表する、そして事務を管理し及びこれを執行するとされています。
議会
議会は地方公共団体の意思を決定する機関及び執行機関を監視する機能を担うものとして組織されています。
執行機関と議会が対立した場合の調整
・議会による長の不信任決議、長による議会の解散
今回の兵庫県知事の場合はこれにあたる
・長の専決処分
議会が成立しない場合や時間的に余裕がないことが明らかである場合に行われる
・長の再議
議会の議決に対し意義がある場合、議決に対し権限逸脱や法令違反がある場合など
執行機関の問題点
執行機関は独任制のとなっていることから長の負担が大きくなる。補助機関として議会の同意を経て副知事や副市長村長を任命できるが、規模が大きくなると長ひとりでは自治体経営に限界が出る場合も考えられる。また、現行制度は長に対し権限が集中していることから、議会との抑制均衡が図られておらず、二元代表制の原理から逸脱する長の権限過剰が見られる場合があります。
議事機関の問題点
現行制度は、長と議会の議員を住民が直接選挙することとした上で、議会が執行権限の行使についても事前に関与する独自の制度として定着している一方で、議会による執行機関の監視を野党的な勢力のみが担いがち、条例提案など政策形成について議会が執行機関に依存、議会の議決行使の実態は長の提案を追認する傾向や、議会による不信任議決、長による議会の解散など、議会と長が対立した場合の解決手段が適切に行使されていないなどといった問題が挙げられています。これまでも、議会に期待される機能に応じた議会のあり方、「住民の縮図」としてふさわしい議員の構成、議会の議員の選挙制度のあり方などが議事機関である議会の課題として挙げられ議論されてきました。
おわりに
地方分権が言われて20年以上が経過しましたが、地方の長と議会はこれまでの制度が定着してることから、まだまだ見直しをしなければならない分野が多々見受けられます。地域主権を確立するためにはトップマネジメントをしやすくする自治体運営の組織形態のあり方や、制度規制の緩和などを行い、執行機関と議会が、双方の協調とけん制のの下で緊張感を保ちながら自治をしていかなければならないと思います。地方自治の本旨である住民自治の原則に則り、二元代表制の下においてより多様な組織のあり方を地方自治体が自らの判断で決定していくことが大事です。
おまけ
斎藤知事の話題から地方自治のあり方の話になりましたが、とある自治体の選挙でもSNS上で二元代表制の話題が触れられていました。今回の知事選挙は県議会や市町村長と対立していましたが、結果としてはSNSなどを活用した候補が勝利をしました。選挙協力をするなど議会と長が密接になることにより、議会の執行機関に対する監視が適正に働かないのは現在の二元代表制では当然起こりうる問題です。執行機関である長と議会が両輪となっていくことは決して悪いとは思いませんが、選挙する住民が長と議会の関係に目を配っていくことで、よりよい二元代表制の下での地域主権が確立されるのだろうと思います。