電気代から考えるエネルギー問題
11月から電気料金が、標準的な家庭で前月比513~650円値上がりすると電力大手10社が発表しました。政府が酷暑対策で行っている電気・ガス代の補助金支給が10月使用分で全て終わるためで、東京電力では608円高い8868円となります。補助金は、ロシアのウクライナ侵攻後の燃料価格高騰を受け、激変緩和措置として2023年1月に始まり、財源には物価高騰対策の予備費が充てられています。政府は総合経済対策をまとめる方針で、電気・ガス代などの高騰に関する支援策も検討をしています。これから寒くなる季節、電気の使用量も増える家庭もあるでしょう。物価高騰が続くなか、電気代までも上がるとなると家計には大きな影響が出ることは間違いありません。さて、今回は生活に欠かすことのできない電力について少しだけ考えてみたいと思います。
日本のエネルギー事情
日本の電力構成は、化石燃料による発電が70%以上を占めており、次いで再生可能エネルギーが22.4%となっています。
日本では電力の化石燃料への依存度が高く、再生可能エネルギーの拡充や東日本大震災以降停止している原子力発電の再稼働が課題となっています。
カーボンニュートラルの実現に向けて
エネルギー問題を考えるときに避けて通ることのできないのが「カーボンニュートラル」です。世界各地て異常気象が発生する中、脱炭素化に向けた取組みを進めて行くことが重要とされ、世界各国で様々な施策が行われています。資源の少ない日本ではエネルギー安全保障と脱炭素から、化石燃料に依存しないエネルギーの比率を上げていくことが今後の課題とされ、主に、再生エネルギー、原子力、CCS(二酸化炭素回収・貯留技術)付き化石燃料の3つが注目をされ、どう組み合わせていくかが課題となっています。
原子力の再稼働問題
先日、東北電力が女川原発2号機を再稼働しました。東日本大震災以降、東日本にある原発としては初めてとなります。東日本大震災の震源に最も近い女川で再稼働が進んだのは、これまで西日本で再稼働が進んでいた「加圧水型軽水炉」ではなく比較的事故が起こりにくいとされる「沸騰水型軽水素」で安全審査が進んだことや、新しい規制基準をクリアする海抜29mの防潮堤の建設などが理由として挙げられる。ただ、これらの技術的な要因だけではなく、震災直後に津波被害のあった住民を発電所内に受け入れるなど、日頃から地元住民と発電所で信頼関係があったことが大きな理由だと考えられます。発電所と住民の間で、感情的ではない原子力に関する知識の理解を進ていくことが、日本のエネルギー問題を解決する糸口になるのではないでしょうか。
おわりに
国内では大量の電力を必要とするデータセンターの建設が続くなど、将来的には電力不足が懸念はれています。また、中東情勢の悪化などからエネルギー供給に影響が出ることも考慮しなければなりません。エネルギー自給率の低い日本がエネルギーの安定供給を確保するために、経済成長と国際情勢などを踏まえた長期的な視点から、再エネに頼ることなく、原子力を活用したエネルギーの安定供給確保と持続可能な社会に向けての取組みをしていかなければなりません。
おまけ
原子力というと危険といった感情論になりがちなために、なかなか相互理解が進まない問題。個人的には原子力技術は発電だけに限らず様々な分野に応用が効くので大切な技術だと思っています。小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル回収にも原子力技術が使われていたほど。今回の写真がなぜ神社?と思われたかもしれませんが、この神社の境内には電気を祀っている「電気神社」があります。元々は発電所内にあったのが政教分離など紆余曲折を経てこちらに移ってきたそうです。電力が国営だった時代と憲法の政教分離の話題はいつか掘り下げてみたいと思います。
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