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1%以下の戦い

 注目していた松戸市長選挙が終わった。人口50万人の大都市とはいえいち地方自治体の首長選挙になぜ注目していたかというと選挙の投票方法がとても珍しいからである。選挙と言えば選んだ人の名前を書くのが日本では一般的だが、松戸市は「記号式投票」と呼ばれる方式で候補者の名前の上にスタンプを押すだけの簡単な投票方法となっている。衆議院選挙と同時に行われる最高裁判所の裁判官の国民審査と同じ方法で投票できるのだから面白い。
 
 さて、この通称スタンプ方式は「疑問票を少なく出来る」「開票作業に掛かる時間が少なくてすむ」などのメリットがある反面、「最初に名前が書かれているものが有利になる順序効果が発生する可能性がある」「参議院の比例区のように投票先が大量に存在する場合、投票者が投票先をすぐに選ぶことが難しく手間がかかる」などのデメリットがあると言われている。今回の松戸市長選挙は候補者9人。首長選挙としてはかなり多いほうだと思われるなかで、無効票が1,612票あった。投票総数は151,366票なので率にして1.06%が無効票だったことになる。はたしてこの1.06%の無効票率は多いのか少ないのか?これだけでは比較できないので、同じ千葉県で人口規模が同じくらいの市川市で令和4年3月に行われた市川市長選挙と比較をしてみよう。ここは当然記号式ではないなか投票総数155,197がに対して無効票は2,314票。無効票率にすると1.49%。1.06%と1.49%と数字で見てみるとどちらも1%台のどんぐりの背比べ状態。
 
 もしかしたらあまり「記号式投票」は有効ではないのか…。
 
 これではよくわからないので昨年の千葉県知事選挙の例を見てみよう。千葉県選挙管理員会のHPにはご丁寧に無効票率まで掲載されているのでとても助かる。令和3年3月の千葉県知事選挙では千葉県全体の無効票率は1.28%。先ほどの松戸市長選挙と市川市長選挙のちょうど中間位の数字。それでは松戸市に注目してみると投票総数137,638票に対して無効票1,891票。なんと市長選挙よりも0.3%高い1.37%となった。候補者や選挙の争点などの違いから単純比較はできないけれどスタンプ式で選挙をした場合と名前を書く方式では無効票率に違いが出ることが分かった。仮に今回の市長選挙の投票総数から1.37%の無効票が出た場合には約400票多い2,073票の無効票がでる計算になる。松戸市長長選挙では現職が圧勝だったために400票の差では結果に影響はでないが、世の中には1票の差で落選する場合もあるのでこの0.3%の違いは大きいのではないだろうか。
 
 記号式投票の効果について思いついたことをかいてみたが、松戸市長選挙場合は期日前の投票は記号式投票ではなく従来の方式なのでもしかしたら無効票は期日前に多かったのかもしれないがそこのところを示すデータがないので検証できないのが残念。

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