災害リスクからみる都市形成
こんばんは。今日の午前中は東日本を中心に広い範囲で激しい雨が降り、場所によっては1時間に30㎜を超え大雨警報が出されました。また先日、地震によって大きな被害が出た能登半島においても大雨警報が出され地震で地盤が緩んでいる地域が心配です。記憶に新しい昨年の取手市を中心とした水災害、令和元年の東日本台風など、気候変動の影響により近年は水災害が更に頻発化、激甚化することが予想されていることから、災害リスクを踏まえた土地利用の重要性が高まっています。
土地利用の観点から災害リスクを減らす方法として、土地利用規制、土地利用誘導、移転などがあります。今回は災害に係る土地利用規制制度や災害リスクを踏まえた土地利用に関する取組について考えてみます。
土地利用規制制度
災害によって被害が生じる恐れがある区域に土地利用規制を行う制度として、災害危険区域、土砂災害特別警戒区域、津波災害特別警戒区域、浸水被害防止区域がある。また、災害につながるおそれがある行為を原因地において規制する急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域があり、津波災害特別警戒区域を除く5地域を総称して「災害レッドゾーン」と呼んでいる。土地利用規制区域はそれぞれ都道府県知事や地方公共団体が指定し対象となる災害も津波、高潮、津波、地すべり、洪水などが定められている。また、開発や規制に関してもそれぞれ規制がある。これらの区域は都市計画法第29条に基づく開発行為をする場合に原則含まれないものとされ開発行為が制限され、都市計画において市街化を図るべき区域としてふさわしくないとされている。ただし災害危険区域を指定する条例による建築制限に適合する場合には例外的に認められることがある。
災害リスクを踏まえた土地利用の動向
平成30年7月豪雨までは洪水等の対策として土地利用に関する大きな動きは見られなかったが、西日本を中心とした豪雨災害を受けて、気候変動による豪雨の増加や広域災害に対応する取組として、都市機能の集約や居住の誘導に災害リスクが反映され、「国土強靭化計画」に災害リスクの高いエリアに立地の抑制やエリア外への移転を促進することが盛り込まれた。
災害リスクを踏まえた土地利用に関する動きとして、開発許可制度の見直し、浸水被害防止区域の創設、防災まちづくりガイドラインなどが挙げられる。また、よりリスクの低い区域への誘導を図る制度として水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明や移転に関する動きとして防災集団移転促進事業の対象区域を拡大するといったことも行われている。
おわりに
市町村は水災害リスクが存在する区域についてはリスクを可能な限り避けることを原則としながら、都市の構造や歴史的な都市形成過程、人口増減や土地の利用動向を踏まえたバランスのとれた街づくりをしなくてはならない。土地利用規制は私権制限に関わるため、活用には細心の注意が必要となることから、土地利用規制のガイドラインでは「関係者との丁寧な合意形成が重要である」としている。規制に対する抵抗が大きく、大災害後でなければ実現が困難なことから、安全な土地の利用へ誘導する方が現実的という指摘もある。
頻発化している災害に対して土地利用の在り方を地域住民でよく話し合い、地域に沿った土地利用の対策に取組んでいくことが重要となってくる。
おまけ
本来は都市計画区域における市街化区域と市街化調整区域の話題にしたかったのだが、今日の雨により災害の土地利用に変更になってしまいました…。都市計画法によれば市街化区域は既に市街地を形成してる区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るでき区域であり、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域である。この法律ができた昭和43年といえば、少子高齢化の波もなく日本経済が右肩上がりで、昨今の気候変動による災害の頻発化、激甚化もない時代である。災害リスクからの都市形成はもちろんのことだが少子高齢化などを考慮した都市計画のあり方についても考えていかなければならないのではと感じています。