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二重処分について

新しい総理が決まり、いよいよ解散ムードになってきました。経済・安全保障など様々な課題が山積するなかで、次の選挙の争点は何になるのか各党の政権公約が出てきてからに分かると思います。また、今回の総選挙においては派閥の政治資金規正法違反事件で収支報告書の不記載問題があった議員の公認問題が話題になることは間違いないと思います。石破総理は、小選挙区の公認について
1.選挙における非公認よりも重い処分を受けたものについては、非公認とする。
2.また選挙の非公認よりも軽い処分であっても、現時点で引き続き処分が継続しているものについては、政倫審で説明責任を果たしているものを除き、非公認とする。
3.さらに処分を受けたその他の議員のうち、説明責任が十分に果たされず、地元での理解が十分に進んでいないと、そのように判断されるものについても、非公認とする。
派閥の政治資金パーティーを巡る不記載があったその他の議員についても、比例名簿への登載はしないこととし、候補者が選挙区において、説明責任を果たし、退路を断って有権者の審判に当落を委ねることとする。
といった旨の発言をしました。また総裁と四役は比例重複なしとも発言しています。
これに対して、自民党内から二重処罰はしたことに対しての意見も出ているようです。直接の関係はないですがこれを機に今回は二重処罰について考えていきたいと思います。

二重処罰とは

一つの罪に対して処罰を受けていた場合において前の処罰の決定を覆すのではなく、更に別の処罰を下すことを指します。これは憲法39条に「何人も、……既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」とされています。刑法上において二重に刑罰を科すことを禁じていることから、会社内などの懲戒処分においても二重に処分することを禁じていると考えられています。

処分と刑罰

過去に刑法上の刑罰と行政処分などが併科されたことが違憲であると争われたことがあります。運転免許の停止処分を受けた被告が、同一事実にもとづいて刑事訴追を受け有罪になったことが憲法39条に違反しているかが争われた際に、最高裁は運転免許停止処分は行政処分であり刑罰ではないとし、同一事実につき有罪判決を言い渡されても憲法39条に違反しないとしました。その他にも追徴課税と刑罰や懲戒処分と刑罰について争われたことがあり、いずれも二重刑罰にあたらないとされています。

海外の例(二重の危険条項)

日本では二重刑罰の禁止と言われていますが。アメリカにおいては「何人も、同一犯罪行為を理由に生命又は身体を二度危険にさらされることはない」として、処罰が民事、刑事について処罰的か是正的かを判断しながら考えるとされている。

終わりに

駆け足で二重処罰について学んでみましたが、日本だけではなく、アメリカにおいても同一事実に対して二重に処罰することは禁じられています。また、二重処罰の禁止を語る上で外すことのできないのが「不遡及の原則」です。これは新たに作成した懲戒処分の種類や懲戒事由を、それ以前の行為に適用することはできないという原則です。今回の自民党内の公認問題は、新しい総裁が新たにルールを設けて不遡及の原則に反しているとも考えられます。不記載問題を擁護する訳ではありませんが既になされた処分を総裁の考え方だけで新たに制裁を加えてしまうのはガバナンス的には問題があるのではないでしょうか。

おまけ

今回の自民党内の処分で比例重複は認めないというのもあった。個人的に衆議院小選挙区と比例区での重複立候補というのは、政党に所属するかしないかで大きく差が出る制度だと思っているので、先の東京都知事選で起きたら公職選挙法上の問題と併せて、この際に見直すべきではないかと考えています。



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