東南アジア放浪記 ~猛者~
ラオスにて。長距離バスで次の町へ。寝台バスだが2人でひとベットのため、他人と添い寝をすることになった。スペースがほとんどなく体を真っ直ぐにしていなければならないうえに足も完全に伸ばせない。バス内は欧米のバックパッカー達と現地の人々が混在している。停車する度に乗客は増えていき、ベッドの数が足りなくなった今では通路で人がひしめき合っている。
すると、バスが山道の真ん中で停車した。何も知らされてないが乗客がぞろぞろと出ていく。外はまだ明るい。恐らくトイレ休憩だろう。しかし、辺りを見渡してもトレイらしきものは一切ない。運転手に何分の休憩か聞くためにGoogle翻訳をした画面を見せても理解してくれなかった。何分間の休憩か分からないままバスを降りた乗客たちは一斉に散らばる。道路の左右には林が生い茂っており、人々はその林に入っていく。そう、野糞をするために。
同じ割合くらいの現地人と欧米バックパッカーは当たり前のように、停車しているバスの周りの林に入り抵抗なく用を足す。運転手からは制限時間を伝えられていないため、もたもたしてれば置いていかれてしまう。野糞のチキンレースみたいなものだ。これにはすごいゲーム性がある。早く用を足すほど、バスに置いていかれる心配は無い。だが小心者であればあるほど人に見られたくないためバスから離れた林の奥へと進んでいく。強者はバスの中から見える程の近い林のとば口でズボンを下ろす。当たり前だが、奥へ行くほど移動時間を要してしまい、バスへ戻るのが遅くなる。そうなるとバスに置いていかれるリスクも増え、かなり危険だ。現地のおばあちゃんも欧米の可愛らしい美女バックパッカーも抵抗なく林に野糞をしに行く。その光景は異様だった。
俺は運良く(小)の方だったため、バスからおりてすぐ目の前の茂みで用を足そうと思い、茂みをかき分けると、 70歳くらいの現地のおばあちゃんがズボンを下ろし野糞(特大)の最中だった。このゲームの猛者だ。おばあちゃんは後ろを振り返り俺の顔を見ると、なんの動揺も見せず、続けた。これが動物本来の姿なのかもしれないと林の間、沈みゆく夕陽を前に立ち尽くす俺であった。