パサー(上) vs ガーダー(下):身体つきの比較
ブラジリアン柔術のプレースタイルを大きく分けると、パスガードを得意にするパサー(上)とガードからの攻撃を得意にするガーダー(下)に分かれます。その位置関係から、パスガードを上攻め、ガードからの攻撃を下攻めと言ったりします。上の写真だとネイビー道衣の人(上)がパスガードを、白い道衣の人(下)がガードからの攻撃を狙っています。
さて、パサーとガーダーで身体つきに違いがあるのでしょうか?パスガードにはスピードと力強さが、ガードからの攻撃にはしなやかさとテクニックが求められる気もします。このイメージ通りの違いが身体つきにもあるでしょうか?
身体つきの違い
表1に示したように、Báezたちが2012年のIBJJF世界選手権に出場した紫、茶、黒帯の選手をパサーとガーダー(注1)に分け、身体つきを調べたました。すると身体つきにはわかりやすい違いがありました(Báez et al., 2014)。平均身長はガーダーで176 cm、パサーで170 cmと、ガーダーで6 cmも高くなっていました。この差は大きいですね。
また、身長とウエストの比がガーダー(41.84)で、パサー(40.58)より大きくなっていました。これは身長を考慮してもガーダーの身体が引き締まっている(ウエストが細い)ことを示しています。なお体重、BMIに違いはありませんでした。体型の違いを一言でまとめると、パサーはガッチリしていて、ガーダーはスラッとしています。
また、脂肪量や筋肉量に違いはないのですが、骨量はパサーで多くなっていました。骨が太いのです。やはり比較するとパサーはガッチリしているのでしょう。
パスガードでは相手に近づくことが必要です。そのためには相手を押したり固定したり、自分の姿勢を保ったりと筋力や重力を使うことが求められます。そのためにはガッチリしているとパワーがあるので有利です。逆にガードでは迫ってくる相手との距離を取る(近づかせない)必要があります。そのためには手足が長い方と特にオープンガードで有利です。このような動きや運動要素の違いが、身体つきの違いに表れるのでしょう。
日本を代表するパサーとガーダー
日本を代表する柔術家であるボンサイ柔術のマルコス・ソウザ選手、ホベルト・サトシ・ソウザ選手の兄弟は、マルコス選手(上の動画)がパサー、サトシ選手(下の動画)がガーダーと言われます。下の写真を見る限り、身体つき傾向は上のデータとあっているようです。
まとめ
得意なプレースタイルが身体つきだけできまる訳ではありませんし、競技としてはガード、パスガードの両方ともできる必要があります。とはいえ、自分の強みを利用すると有利なゲーム展開につながります。身体つきがそのヒントになるかもしれません。
引用文献
Báez, E., Franchini, E., Ramírez-Campillo, R., Cañas-Jamett, R., Herrera, T., Burgos-Jara, C., & Henríquez-Olguín, C. (2014). Anthropometric characteristics of top-class Brazilian Jiu Jitsu athletes: Role of fighting style. International Journal of Morphology, 32(3), 1043-1050.
(注1)2012IBJJF世界選手権の試合における各選手の戦略から分類しました。
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