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格闘技でもそれほど怪我をしない:バスケットボールとの比較

格闘技をやってみたいけど、踏ん切りがつかない。その理由に怪我のリスクがあると思います。怪我をしたら痛いですし、大きな怪我だと仕事や学校を休まなくてはなりません。影響が長く残る可能性もあります。

でも、怪我って普通に生活していてもしますよね。また、球技やウエイトトレーニングなどの格闘技以外のスポーツやトレーニングでも怪我のリスクはあります。さて格闘技はそんなにリスキーなんでしょうか?

全米のデータ

Pappasは、2002年から2005年に全米の病院に怪我をして救急搬送された人のデータから、格闘技で怪我をしたケースを調べました(Pappas, 2007)。米国消費者製品安全委員会では、消費者の安全を確保するために全米すべての救急搬送についてデータを保存しているそうです。このデータを使ってボクシング、レスリング、その他の格闘技に分類し調査をしました。

格闘技で病院に救急搬送されたケースは7290件ありました。このデータを競技者10万人あたりの数に直して、下の表に載せました。また、バスケットボールの結果と比較しました。

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レスリングが39.9件で一番多くなり、ついでボクシングが29.0件、その他格闘技は5.8件でした。5.8件は少ないですね。なお、その他格闘技には空手などコンタクトがないものが含まれていました。これが、少ない理由だと考えられます。

バスケットボールは45件なので、どの格闘技より明らかに救急搬送が多くなっています。バスケと比べる限り、格闘技で怪我のリスクが高いとは言えません。ただし、Jaretらの研究によると大学の選手で比較するとレスリングの方が、バスケットボールより怪我が多い。競技レベルについては考慮する必要はあるようです(Jaret et al., 1998)。

格闘技でもそれほど怪我をしない

全米のデータを見る限り、格闘技での怪我が他の競技よりも多いとは言えないようです。また、いずれのスポーツでも、救急搬送が必要になる重度の怪我は非常に少ないことがわかります。10万人あたりせいぜい数十ですからね。スポーツをやる限り、多少の怪我は避けられません。それでも、きちんとした指導の元、安全に配慮して行えば格闘技における怪我のリスクはかなり小さくなります。少なくとも他のスポーツよりひどく大きくはありません。格闘技に興味はあるものの怪我のリスクも気になる方は、データから実際のところを知っていただければと思います。

引用文献

・Jarret, G.J., Orwin, J. F. and Dick, R. W. (1998) Injuries in collegiate wrestling. American Journal of Sports Medicine 26, 674-680.
・Pappas, E. (2007). Boxing, wrestling, and martial arts related injuries treated in emergency departments in the United States, 2002-2005. Journal of sports science & medicine, 6(CSSI-2), 58–61.

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