松田の数学IA/IIB 典型問題Type100


この問題集の特徴として
①問題の汎用性が高い
②解法へのアプローチに特化してる構成
→数学を体系的に学ぶことができる
→一般受験(特に国公立)に太刀打ちできる基礎的な内容を身に付けたい人向け

<全体>
今回は私が高校生の時1番やりこんだ『松田の数学I・A/II・B典型問題Type100』という問題集を取り上げたいと思います。
著者は東進ハイスクール講師の松田聡平先生で、レベル感は高校一年生後期から高校三年生前半くらいまで対応可能ですが、難関大を目指す人は高校2年生までにこのレベル感の問題を典型解法として体系化できているといいと思います。チャート式などのいわゆる網羅系問題集を最小限に薄くして、必要最低限でかつ、最大限の数学力向上が目指せる最重要解法が単元ごとにまとめられています。(①)
網羅系問題集は、問題集が膨大すぎてたいていの人が途中で挫折して中途半端になる上、網羅系を片っ端から目的もなく解いていても、全体像が見えにくいため解法の体系化ができないのではないかと私は考えているのですが、type100は典型解法を身につける上で必要な問題のカテゴリー分けのポイントがつまっている一冊なので最短ルートで数学力を効率的にあげる解法の体系化ができる問題集だと思います。(②)
松田先生の授業の特徴でもあるのですが、冗長で「分かりやすい」説明をするよりも、問題の発想の部分を重視し、ある程度の「分かりづらさ」という余白を残す解説をすることで生徒の自力で考える力を伸ばすことを目的とした教え方なので、本書も簡潔にポイントだけを押さえている解説が特徴的です。
このような解説は数学が苦手な高校生にとっては読み解くことが難しい箇所もあると思いますが、少しずつ自力で取り組み、この一冊をやり切った時には発展問題にも太刀打ちできる汎用性がある数学力が身についていると思います。どうしても難しい場合に周りにわからない問題を聞ける先生などがいるとより効率的に学習できると思います。

<空間図形>

type47 空間図形
まず図形の対称性に注目して、立体図形は平面図形に落とし込んで考えることが最重要事項だと思います。
与えられた立体図形だけで問題を最後まで解こうとするのではなく、途中で断面を切り取って図を自分で書き直すことで相似や比が見えやすくなります。
わからないと思った時に手を止めて悩むのではなく、まずは手を動かして実験してみる、図を切り出してみることで解法の糸口が見えることは多くあり、これは空間図形に限らず、全範囲において言えることではないかと思います。
下の付箋にもありますが、三角錐の内接円、外接円の高さhや半径rを求める問題はすぐに断面図を描き、三平方の定理や相似を利用してなるべく初等幾何を用いて解きほぐすことが大切です。
また図形問題において正しい補助線を引きたくなる動機を持つことも重要であり、例えば円と直線が絡む問題が出てきたら問題で聞かれている内容に問わず、まずは円と直線の交点と円の中心を結び、円の中心から直線に下ろした点が線分を二等分すること(付箋参照)を図に書き込むことが準備段階としてできるようになると良いと思います。また円と直線が絡む問題は点と直線の距離の公式を積極的に使用することも重要です。
II(2)のアスタリスクにもあるように、Vを2通りで表現することでrを出しています。
ベクトルでも2通りで表現して係数比較する解法が典型ですが、このように2通りで表現して比較するというのも重要な考え方です。
このように、pointで問題を解く上で重要になる発想部分に言及し、approachで解説の補助となるような図や考え方を確認して、アスタリスクで発展事項を取り上げるという配置の仕方がこの問題集の魅力ですし、細かいことですが、問題と解説が別ページになっていることで片面を隠せば解説が目に入らないところも良い点だと思います。
問題を解く上で自力で解けない時にまずpointを見ることで、通常、考える→解答を見る、という2段階の問題集が多い中で、type100ではpointで発想部分を得た上で再び自力で解いてみることができるため、3段階で理解を深められてさらに実践的な数学力を身につけられるのではないかと思います。
数学力がある程度ついている人でもアスタリスクなどの発展事項を押さえていけば数学力はさらに向上すると思いますし、難関大入試でよく見られる分野融合問題に立ち向かえる力になると思います。


<軌跡>


type65 軌跡①
Iにもあるようにまずは角APBが90°であることはABを直径とする円の円周上にPが位置すること、という問題文の言い換えを行うことで一気に解法の道筋が見える問題です。
なるべく初等幾何を使う意識はここでも大切ですが、問題文を言い換えて条件を抽出することは、特に確率などの文章問題やtype65のアスタリスクでも言及されてるような存在条件を考える通過領域の問題などでも必要な考え方だと思います。
IIでは求める点Pの座標を設定していますが、中にはもう一つ動点があって点Qなどとおいて変数扱いしなければならない問題もありますが、2動点となった時も基本的に点Pの座標X,Yの関係式を導き出すことが目的であり、あくまで点Qは計算過程を経て消さなければいけない文字であることを意識することが大切です。ただの変数でも最後まで残るべき文字と消さなければいけない文字を区別し、目的やゴールを意識しながら問題解くことは重要だと思います。

<線形計画法>

線形計画法の問題は松田先生の授業で嫌というほど解いているのに、領域やターゲットに変数が含まれていて図形の形や傾きが変化して場合分けが発生する(3)のような問題でいつも解けなくなった苦い思い出があります笑
松田先生は「理解できない問題」と「理解できているのに自力でできない問題」は全く違っていて、合否を分けるのは後者だといつも言っていましたが、だからこそ理解することを目標にするのではなく、自力で解けることを目標にした勉強を行うことが大切なのだと思います。
線形計画法はまず正しく領域を図示して、最大値最小値を求めるターゲットをkとおいてこれも図示し、kが最大最小となるように動かしていくという問題ですが、松田先生はこのような特徴的な解法の問題に印象的な名前をつける教え方(線形計画法はスライディングギリギリ)なので問題を見た時パッと思いつけるようになったことが自分の数学力をあげてくれたなと思います。

<総括>
私はこの問題集を高2の間何回も何回も解いて数学の典型解法が体系化できていたおかげで、高3からの発展問題が多い過去問にスムーズに移行できたと思っています。一問に対して何十問も対応できるような普遍的な数学力がつく問題選抜になっていると思います。
そして単元が切り替わるごとに入っている松田先生が書いたコラムもとっても面白いです!
対象式を見た時に基本対象式を準備して戦うために解と係数の関係を使うとか、インテグラル絶対値は中身のグラフを描いて面積で考えるとか、反復試行は書き出してサンプリングを作ってシグマ計算するとか、遷移性から確率漸化式を考えるとか、内積は影×スクリーンとか、2曲線が共通接線をもつことと2曲線が接することの区別とか、解の個数を調べる時に定数分離不可の場合は極値積を考えるとか、三次関数の等間隔性よりmaxminiを考える時は8分割ボックスに入れて端点との距離を調べて場合分けの境界を見つけるとか、群数列の問題はk群の風景をまとめてから取りかかるとか、解かない漸化式では周期性を期待して実験してみるとか、、
こんな思いつきでバーっと書けてしまうくらいキーワードで頭の中にストックされたことで、数学を解く上での発想の部分が本書を通して頭の中で体系化されて、発展問題も典型解法に帰着できるようになったことで数学への苦手意識が一気になくなりました。
松田先生の授業を受けた上でtype100を解くことで、さらに理解が深まる部分はあると思いますが、それが難しくてもこの問題集は数学力を大きく伸ばしてくれる問題集だと思います。

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