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物理学の躍進の陰にあった疫病―物理学者へのエールを込めて

今や多くの分野で、世界的に新型コロナウイルス感染によって行き詰まった感があります。ところが、これは物理学にとってブレークスルーの突破口になるかもしれないということを、物理学者へのエールを込めてお話ししたいと思います。

新型コロナ禍で大きな損失を受けている業界はBEACHと呼ばれているそうです。Bは旅行予約(Booking)、Eはエンターテインメント、Aは航空(Airline)、Cはカジノ・クルーズ、Hはホテルだそうです。そして、飲食業もそうでしょう。さらに、物理学の研究の世界も例外ではありません。新型コロナ感染により、人が集まって行う研究やディスカッションがことごとく影響を受け、これまでのようなやり方で研究を継続することが難しくなっています。もし研究が滞れば、研究成果を生み出すことが難しくなります。

しかし、このような状況は、すべての業界に当てはまらないのと同じように、すべての物理学者にも当てはまりません。新型コロナ禍を大きなチャンスとして捉え、研究を進めている物理学者がすでに現れているでしょう。新型コロナ禍によって大学や研究機関へのアクセスが制限された結果、より多くの時間を自宅で過ごしながら研究を継続していると思います。自宅において一人で研究をするわけですから、途中で研究を中断してくるような雑用に困ることがありません。一人で落ち着いてじっくり考えながら研究をしたい物理学者にとって、昨今の新型コロナ禍は千載一遇のチャンスです。

16世紀のイギリスのロンドンで腺ペストが大流行したとき、後の偉大な科学者、アイザック・ニュートンは、ケンブリッジ大学の学生でした。ペストの大流行によって、大学は休校となり、ニュートンは実家のリンカーンシャーに身を寄せて研究を行いました。その中で、木から落ちるリンゴを見て、「慣性の法則」、「運動の法則」、「作用・反作用の法則」の三つの運動法則をひらめき、「万有引力」を解明しました。そして、この成果を『Philosophiae Naturalis Principia Mathematica(自然哲学の数学的諸原理:通称、プリンキピア)』という本にまとめました。その他にも、「微分積分学」の基礎となる研究や、プリズムでの分光の光学実験など、主要な業績のほとんどを休学期間中に成し遂げました。「万有引力」「微積分学」「光学」を成し遂げたこの期間のことをニュートン自身は「創造的休暇」と評したそうです。このニュートンに実際に起きたことから分かることは、ペストという疫病をむしろ肯定的に捉え、それをチャンスとして活かすことで、結果的に科学の発展につながったということです。

今回、私たちは新型コロナという新たな疫病を迎えました。この疫病で多くの自由が奪われ、制限の付く生活を余儀なくされているわけですが、制限が付くからこそ落ち着いて自然の真理を追求する自由を獲得した人は多いことでしょう。現在、インターネットの普及で専門の知識を簡単に無料で得られる素晴らしい時代を迎えました。それを考えると、物理学の多くの分野において、専門家ばかりでなく一般の人でも独力で研究ができる夢のような時代になっています。これからの時代に対して、決して卑屈にならず焦らず、多くの人がこの新型コロナ禍を大きなチャンスとして迎えることを願って止みません。このチャンスを活かして、第二、第三のニュートンが、世界から、日本から出てくることを願って筆を置きます。

By Jaros


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