共鳴が織りなす宇宙のハーモニー

何かに共感したり、ギターの弦がうなるようなとき、共鳴という表現を使います。そんな共鳴の不思議で奥深い性質について紹介したいと思います。

1) 共鳴とハーモニー

◾️精神と物質は共鳴によってつながっている

私たちは、何かに共感したり、誰かと気持ちが通じ合うとき、しばしば共鳴という表現をします。そして、何かに、誰かに心で共鳴すると、不思議な一体感を味わうから不思議です。複数の人が同時に共鳴をするとき、この一体感は自然でハーモニー(調和)の取れた感情と行動を集団にもたらします。

ところが、共鳴は人の精神においてばかりでなく、物質の現象にもあります。物質で起こる共鳴も、自然で統制の取れたハーモニーをもたらします。科学、特に物理学では、共鳴は重要な現象の一つとされていて、自然の仕組みを調べる上で大きなカギを握ります。少し大袈裟かもしれませんが、精神と物質は共鳴によってつながっているように見えるのです。

2) 波動が誘なう共鳴の恵み

■ギターとよく似た電子の共鳴

物質の共鳴の例として、ギターの弦の振動があります。ギターの弦を弾くと一定の高さの音がしばらくの間、鳴り続けます。この時、両端が固定されたギターの弦は大きく振動します。この振動がまさに共鳴の状態で、基本振動になります。ギターをよく弾かれる方ならご存知と思いますが、ギターの弦を触れるか触れないかぐらい左手で軽く押さえて右手で弦をはじくと、ハーモニクスという基本振動の倍音が出ます。プロのギター演奏家は、ハーモニクスを演奏効果の一つとして奏でることがしばしばあります。この弦の基本振動と倍音を奏でた状態が、実は原子中の電子と同じだと言ったら、意外に思うでしょうか。

原子の中心にある原子核の周りにある電子は、粒子としてより波として存在しています。これは、19世紀から20世紀にかけて発展した量子力学の研究でわかってきました。電子が、原子核の周りを波のように回ることを想像するのは、すこし変な感じがしますね。しかし、電子が波の性質を持つことによって、共鳴の性質が現れます。

■電子の共鳴の恵み

原子の周りをぐるりと取り囲む電子が一本の弦をつくるとします(図)。その弦が、ギターの弦のように振動して共鳴状態にあるとき、電子は原子に留まることができます。図の例では、波長3つがつながった共鳴ができています。私たちの住む世界や宇宙の物質をつくる原子は、電子の共鳴のおかげで存在できています。共鳴によって電子が安定した調和の状態に置かれ、そのおかげで物質がこの世に安定して存在できる。

共鳴した電子の様子(修正)

これは、冒頭で述べた、精神に一体感やハーモニーをもたらす共鳴と、ある意味似た性質です。精神と物質とは別な存在ですが、物理学というメガネを通すことによって、似たところが見えてくるのはとても不思議です。

3) 共鳴のもうひとつの恵み

■エネルギーの整流と貯蔵

そんな共鳴にはもう一つの性質があります。それは、エネルギーの流れを調整しながら、エネルギーを貯蔵するという、エネルギーの整流と貯蔵の性質です。

先ほどのギターの例で、共鳴が起きて一定の高さの音が奏でられることを紹介しました。実際に弦をはじくと、いろいろな高さの音のエネルギーが弦に与えられます。ところが、共鳴のエネルギー整流作用によって一定の高さの音のエネルギーだけが選択されます。これは、エネルギーの流れを調整するようなはたらきです。そして、共鳴のエネルギー貯蔵作用によってギター本体にそれぞれの音のエネルギーが溜まり、満杯になると音が外に発せられます。ギターの形状は、このエネルギー貯蔵をもっとも効率的に行うように、長い歴史を通して人間の勘によって厳密に決められてきました。

共鳴を起こす例として挙げた先ほどの原子中の電子にも、エネルギーの整流と貯蔵の性質が確かにあります。共鳴の状態にある電子は、外からいろいろなエネルギーを光として受けますが、特定のエネルギーの光しか受け取りません。そして、電子はエネルギーを貯めます。以前、拙著ブログの「地球は電気エネルギーの貯蔵庫か」でご紹介したように、全地球的な電波の共鳴(シューマン共鳴)においても電気のエネルギーが地球の周囲に貯まります。

■水の流れに例えると

エネルギーの整流と貯蔵作用という共鳴の性質を、水の流れに例えることができます(図)。上流から流れる水はエネルギーを持っていて、高いところから低いところに流れる水は、何もなければそのまま下流に流れてしまいます。しかし、途中に池があれば、池に水を貯め、水が満杯になればまた下流に流れていきます。下流にさらに池があれば、再び池に水を貯めて下流に流れていきます。このとき、水をエネルギー、池を共鳴と見るなら、エネルギーである水は、始めの基本振動の共鳴の池にエネルギーを貯め、次に倍音1の共鳴の池、そしてまた次の倍音2の共鳴の池にエネルギーを溜めながら下流に流れていきます。

水のエネルギーが池に溜まりながら流れ落ちる図

4) 精神と物資の垣根を超えて

精神と物質(ギター、原子、地球など)は異なる存在ですが、統制された全体的なハーモニーを生んでいる点において、共鳴で互いに結びついているように見えます。精神と物質が垣根を超えて同じように見えることを許し、一見不思議だけど精妙な作用をもたらす共鳴という現象を知るとき、宇宙の枠が物質から精神まで押し広げられるように感じます。同時に、この世を作った存在の大きさと美しさも感じるのです。


By Jaros and Lisa

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