1. 数理的手法の入り口 株取引の世界では、数理的手法が日常的に活用されています。専門家が高度な数学と専用のツールを駆使する一方、個人投資家が手軽に使う身近な手法も根底には数理があります。例えば、株価の移動平均チャートは、過去何日間かの株価の平均値を算出し、それをチャートとして表現したものです。単純な方法ですが株価の全体的なトレンドを容易に把握できるためはるか昔から利用されています。 そしてこの「平均をとる」という考え方を数学の言葉で捉え、体系化・抽象化することで、実に様
緒言 その昔、「お金を増やすイコール郵便局・銀行にお金を預けること」、が言い過ぎではない時代がありました。株式投資を生業にする人などは「相場師」と呼ばれなにか闇深い危険な人生を歩む存在のように思われたものです。 しかし時代は変わりました。今や政府自ら国民に対して投資で財産形成しなさいと声を大に勧め、税制はじめ投資活動のための政策的な後押しをしています。 政府が勧めているからといって投資が安全安心な蓄財手段になったわけでは全くありませんが、金融・経済の管理技術が進歩し、また
内容 人間社会の活動の結果として生じ複雑に変動する事象は、運動方程式を計算して出てくる答えのような精密な予測をすることはできません。しかし統計的推論という強力な技術の蓄積のおかげで事象の背後にある母集団の特徴を理解する道が開かれています。 この章では後続の章で必要となる確率・統計の知識を確認していいきます。特に確率の道具立てのところは、あれってどうなってたかな?と振り返ることがよくあるので補足資料もあわせ情報の整理を厚くしました。 1. 母集団と確率変数本稿が
米国の経済学者トーマス・シェリングが1971年に発表した論文"Dynamic Models of Segregation"のなかで,エージェント型シミュレーションの手法を用いて人間社会のなかに人種によるすみわけが発生する理由を提示しました. この研究は戦略理論の発展に大きな影響を与えたといわれています.シェリングは2005年にノーベル経済学賞を受賞しています.この研究以降社会・経済をはじめ多くの分野でエージェントベースシミュレーションの適用が進んでいます. Mesa(Mul
投稿記事集「数理的手法を使っていろいろ予測したい」のなかで引用した公式や定義、定理類について補足する記事です 分位数とは確率変数がとりうる値の区間(データセット)を一定の考え方で分割したとき、その分割位置の値を分位数(Quantile)と呼ぶ.よく使われる分割方法には次のものがあります. 中央値: データセットの中央値(Median)を分位数と決めます。データセットの要素数Nが偶数の場合には中央の値がデータセット内に無いので等分割線の上下2個の値の平均値が中央値になること
投稿記事集「数理的手法を使っていろいろ予測したい」のなかで引用した公式や定理について補足する記事です. 1. 参考書籍 1. A First Course on Statistical Inference ネットからアクセスできるけれど利用・活用の権限が不明な大学の講義用コンテンツと異なりクリエイティブ・コモンズライセンスで公開されています.また pdfで一冊にまとまっているので参照しやすい. @book{Molina2023, title
この章の目的 人間社会の活動によって出現し複雑に変動する事象は、運動方程式を計算して出てくる答えのように精密な予測をすることはできません. しかし推測統計学という強力な技術の蓄積のおかげで事象の背後にある母集団の特徴を理解する道が開かれています. この章では後続の時系列分析や機械学習に取り組むために必要となる統計学の知識を確認していこうと思います.特に確率の道具立てのところは,あれってどうなってたかな?と振り返ることがよくあるので補足資料もつくって情報の整理を厚くした
この章の目的 手元に便利なデータとツールをおいて何か思いつたときすぐに試せるようしておきたい、ということで入手が容易なデータとツールを準備します. 1. データを入手する身近な題材として株価関連のデータを金融マーケット情報を提供するWebサイトからダウンロードする方法,そして公開APIを使ったプログラムでダウンロードする方法をそれぞれ簡単に紹介しましょう. 1.1. Yahoo finance USから株価データをダウンロードする Yahoo financeのサイ
明後日の株価の動きとか,10年後の社会の変化とか気になる将来事象がたくさんあります.そこで思い立ち数理的手法を活用して経済・社会・政治に関わる予測を自ら実践すべく解説,文献,書籍など読み進めました.すると知らない用語や説明のない事実が当たり前のように直撃してきます.門外漢ゆえ仕方のないことと思いつつ,自分の苦労したところは整理して再利用できるようにしておくと、なにか人のためになるのではないかと思い至りました. 筆者はその昔数物系の大学で確率過程や物理を学びました.しかし社会