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芸術家という生き様。 #深堀隆介

 平塚の金魚絵展に行ってきました。作者の深堀隆介さんは、生き生きとした金魚を描く現代芸術家。

 先端科学者にしろ、現代芸術家にしろ、創造をすることを生業にしている人の苦しみは計り知れない。それは有史以来生み出されていないものへの挑戦だからだ。

 

今までここに存在していなかったものを生み出す。そしてそれに他者への共感を生み出す。

 

対象が何であれ、その挑戦を選ぶ人にはある苦しみが待っている。

 

 

「自分には価値がない。」

 

 

という苦しみだ。

 

 高度に情報化された社会では、嫌というほど周囲の近況が入ってくる。

 

「恋人と⚪️⚪️に行ってきた」

「子供が生まれた」

 

創造に挑戦する人、こういった当たり前の幸福を得ていく友人を尻目に歴史に挑まねばならない。何かを創っては、すでに過去にやられていた。こんなことも当たり前だ。

 

 深堀さんもどうやらかつて無明の世界にいたようだ。デザイナー会社を退職して創作にとりかかるものの、彼は自分自身の価値を失いかける。次第に死に対する興味が膨らみ、酒やタバコなどの習慣がますます強くなっていったようだ。

 

 そんな中、ふと水槽を見ると、そこには7年間放置されながらも懸命に生きようともがく金魚の姿があったのだ。彼はその姿と自分を重ねた。

 

 

「金魚を描きたい」


 そこから彼は金魚の作品にこだわった。それも「生きている」金魚だ。絵画はどれも躍動感のある金魚絵だったが、彼のこの思いは紙に描く絵に止まらなかった。

 

 

 ある時にふと、アクリル樹脂を書いた絵に流し込んでみようと思い立ったようだ。液体状態のアクリル樹脂を流し込めば、そこに書いた絵はどうなるか分からない。懸命に書いた絵を台無しにしかねないこの行為は、自分の価値、死と向き合ったからこその発想だったのだろう。


 「生きている」

 

 

そこには、描いた2次元の絵に、くっきりと金魚の影が浮かんだ。水を得た魚が生き生きと泳ぎだしたのだ。

 

 

 

 こうして彼は現代芸術家としての地位を築きあげていったのでした。

 

 

 何かに行き詰まり自分の価値を見失いかけた時、救いになるのは、自分がそれまでなんの価値も感じなかったものかもしれないのです。(彼は7年も水槽をほったらかしでした。)

 

「アートなんか何の役にたつの?」

 

と思っている方こそアートいかがでしょうか。

 

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