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「ロストフの14秒」 ワールドカップサッカー日本対ベルギー(NHKスペシャル)

2018年ロシアワールドカップの決勝トーナメント1回戦、日本対ベルギー。2対2の後半ロスタイム、本田のコーナキックをキーパーのクルトワがキャッチしてから、デブルイネへのパス、ドリブル、DFムニエへのパス、ダイレクトにルカクへ。ルカクがスルーしてシャドリがシュートを決めるまでの14秒。NHKスペシャルで放送されたロストフの14秒。

https://twitter.com/NHK_soccer/status/1070513300742361089

試合は後半に入って原口、乾のゴールで2対0と日本が優勢になった。西野監督は得点による興奮状態の中、長谷部から指示を求められ「これでいい」と答えた。しかし、もっと細かく指示を出せなかったことを後悔していることをインタビューで語っている。

長谷部がコートの中央からサイドに大きくパスを出そうと蹴ったボールにすぐ近くにいた香川に当たった。これを見て悪い印象を受けたことを、インタビューを受けた長友、原口もザッケローニも口をそろえている。長谷部自身も「一つ一つの小さな判断がゲームの流れをガラッとかえる。」と述べている。長友も原口も、心がそこから悪い予感を感じていることを重視している。

この後、ベルギーに得点を許し、日本選手には恐怖心が芽生えた。一方、ベルギーのキーパーは、2点差で負けているときは負けを覚悟していたが、一点返したときには「幸運が天から降ってきた」と述べている。

さらにベルギーに同点とされる。延長戦という選択肢もあったが、ベルギーの猛攻を防げる自信はなかった。何よりも、予選リーグ最後のポーランド戦で決勝トーナメント進出のために無気力試合をしたことで、正々堂々と闘おうとする伏線があった。同様に、不用意だったと指摘される、ロストフの14秒が始まる直前の本田が蹴ったコーナーキックも、予選一回戦のコロンビア戦で得点に繋がった伏線があった。もっと言えば、そのコーナーキックの前のフリーキックの場面は、2010年の南アフリカ大会のデンマーク戦を彷彿させるものだった。

本田のコーナーキックはコロンビア戦と同様の軌道であり、ベルギーは日本のセットプレーの全てを把握していたので、キーパーのクルトワがキャッチすることになる。このクルトワのキャッチもその直前にデブルイネのカウンターに入る姿勢が見えたから、普段はパンチングするところだがキャッチをして、そしてデブルイネにパスをした。この時に吉田は、イエローカードを覚悟でキーパーに当たってプレーを切っていればと後悔するが、現実はミスを悔やんで一瞬下を向く姿が映っている。一方でデブルイネは既に全力疾走してドリブルに入っていた。デブルイネは全選手中で3番目の走行距離があったものの時速30kmという驚異的なスピードでスプリントする。
「神様が与えてくれたチャンス」「その瞬間はチャンスが来たことしか頭になく、(疲労は眼中になく)スペースしか目に入らなかった」と述べている。

デブルイネは最初のツータッチは10mという眺めのドリブルで、前方にいた山口蛍をおびき出し、スリータッチ目でカットしようとした山口の予測に反しスリータッチ目ではスローダウンして、右サイドのフリーのムニエに出した。オシム監督は、この場面で山口は前に出ずに後ろに下がる選択の他に、レッドカード覚悟でデブルイネにファールする選択があったと指摘する。しかし、それは日本の国民性に反することだとも。「故意のファウル」を避けて損をする場面が多く、望ましい結果が得られないがそれが日本人の国民性だ。

長友はルカクについていたが、オフサイドを狙うこともできた。しかし万が一オフサイドにならずに得点を決められたら一生後悔するからルカクを捨てることができなかった。その後、パスの出たムニエに向かい後方を確認しながら、最悪のゴール前のパスコースを消して、横に出させた。そこに味方が追いついていることを信じて。

そのとき4得点を挙げて得点王候補のルカクがゴール前に走り込んで来ていて、一番危ない場所に長友が信じたように味方の長谷場がいた。ルカクはゴールのペナルティエリア内に入る前にスルーすることを決めていた。背後から走りこんでいる味方を視野の後方に捉えていたからだ。ルカクのスルーにはベルギー監督さえも驚かされたが。長谷部はその背後の状況も把握していたので、スルーに合わせて必死に右足を伸ばした。

パスは流れて決勝点を決めたシャドリは、それをスローモーションのように見ながらゴールを決めた。最高の瞬間だったと述べている。努力を積み上げた先に大切な瞬間がある。大切な瞬間から始まると換言することもできる。

・本田のコーナーキックが、コロンビア戦からの伏線があったこと。そして、それが相手の想定内となったこと。
・話題となっていた山口の動きが、デブルイネの想定内だったこと。
ベルギーは後半当初の0対2の展開は完全に想定外だったが、一つのプレーから試合の流れがガラッと変わったこと。
・土壇場で、ポーランド戦の無気力試合から正々堂々と戦う選択しかなくなったこと。
・「故意のファウル」に対する国民性。

番組にはなかったが、ワールドカップ直線の監督の解任劇。「ロストフの14秒」が示唆することはサッカーに留まらない。国民性と宗教まで再考してこそ真の強さが得られる。
世界の潮流の中で、勝利を求め続けて生きていく上で、より多くの人が現象を共有し経験を積み重ねていく環境が構築されるだろう。サッカーに限らずに。

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