【第6回垂れ流し数学模試】理型第5問 解答例
皆さんこんにちは。
今回は第6回垂れ流し数学模試の理型の第5問の解答例です。
空間図形の体積を積分で求める問題ですが, 今回は証明や極限を交えた問題になっています.
題材自体は「ガウス積分」という有名な積分で,
統計で正規分布の累積分布関数を表すとこの積分が登場します.
(2)以降が取っ組みにくかったかもしれません.
それでは見ていきましょう.
問題
注
開催期間後に, 第5問(2)の一部に誤りがあったことが判明しました。
上記は正しい問題です。大変申し訳ございませんでした。
考え方1
(1)は$${xz}$$平面上における, 曲線$${z=e^{-x^2}}$$の$${0\geqq x\geqq a}$$の部分, $${x}$$軸, $${z}$$軸,
および直線$${x=a}$$によって囲まれた部分を,
$${z}$$軸の周りに回転させてできる回転体とみることができます.
さらにこの回転体は平面$${z=e^{-a^2}}$$より上の部分は曲線$${z=e^{-x^2}}$$の回転部分ですが(上の図の薄赤の部分),
平面$${z=e^{-a^2}}$$より下は底面円の半径が$${a}$$, 高さが$${e^{-a^2}}$$の直円柱になります(上の図の黄色の部分).
$${z=e^{-x^2}}$$を変形させると$${x=\sqrt{-\log z}}$$になり,
曲線部分は$${z}$$軸方向に積分すれば求められそうです.
(2)は$${\mathcal{S}}$$と4平面で囲まれた立体の$${xz}$$平面もしくは$${yz}$$平面に平行な平面で切断した時の断面積をまず考えます.
詳しくは解答に譲りますが,
断面上の点Pは, $${xz}$$平面上の曲線$${z=e^{-x^2}}$$の$${x\geqq 0}$$の部分と
$${x}$$軸および$${z}$$軸に囲まれた領域上にある何らかの点Qを,
$${z}$$軸に関する回転で移った点のはずです.
この条件をもとに, 断面上の点Pの存在条件を求めて断面積を積分を用いて表せば,
この積分は完全には計算できませんが, 問題で与えられた定積分$${I(c)}$$がうまいこと現れるはずです.
断面積が分かれば, さらに断面積を断面に垂直な方向に沿って積分すれば$${V_2(b)}$$がでるはずです.
(3)は, (2)によりわかる$${V_2(c)=\{I(c)\}^2}$$を利用するため,
まず$${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_2(c)}$$を求めます.
それぞれの立体を切り取っている立体
($${V_1(a)}$$のほうなら半径$${a}$$で$${z}$$軸を中心軸とする直円柱面,
$${V_2(b)}$$のほうなら4平面$${x=b}$$, $${x=-b}$$, $${y=b}$$, $${y=-b}$$で囲まれてできる正四角柱)
に着目します.
これらの切り取っている立体の包含関係を考えると,
$${V_2(c)}$$は$${V_1(c)}$$より大きく, $${V_1(\sqrt{2}c)}$$より小さいことがわかります.
(1)を使えば$${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_1(c)}$$や$${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_1(\sqrt{2}c)}$$が求められるので,
はさみ打ちの原理から$${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_2(c)=\lim_{c\to \infty} {I(c)}^2}$$もわかります.
正の数$${c}$$によらず$${I(c)\gt 0}$$なので, $${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_2(c)=\lim_{c\to \infty} I(c)}$$もこれで分かります.
解答例1
(1)
求める立体の体積は,
$${xz}$$平面上における, 曲線$${z=e^{-x^2}}$$の$${0\geqq x\geqq a}$$の部分, $${x}$$軸, $${z}$$軸, および直線$${x=a}$$によって囲まれた部分を,
$${z}$$軸の周りに回転させてできる回転体の体積に等しい.
さらにこの回転体は,
曲線$${z=e^{-x^2} \Leftrightarrow x=\sqrt{-\log z}}$$の$${e^{-a^2}\leqq z\leqq 1}$$の部分を$${z}$$軸の周りに改選させてできる回転体と,
底面円の半径が$${a}$$, 高さが$${e^{-a^2}}$$の直円柱を組み合わせた立体である.
したがって,
$$
\begin{aligned}
V_1(a)&=\pi\int_{e^{-a^2}}^1\left(\sqrt{-\log z}\right)^2 dz + \pi a^2e^{-a^2}\\
&=-\pi\int_{e^{-a^2}}^1 \log z dz +\pi a^2e^{-a^2}\\
&=-\pi\big[z\log z-z\big]_{e^{-a^2}}^1+\pi a^2e^{-a^2}\\
&=-\pi\left\{-e^{-a^2}\left(-a^2\right)-\left(1-e^{-a^2}\right)\right\}+\pi a^2e^{-a^2}\\
&=\boldsymbol{\pi\left(1-e^{-a^2}\right)}
\end{aligned}
$$
(2)
$${k}$$を$${-b\leqq k\leqq b}$$を満たす実数とし,
$${V_2(b)}$$にあたる立体の平面$${x=k}$$による断面を$${\alpha_k}$$, 断面積を$${T(k)}$$と表す.
$${\alpha_k}$$(上や下の図の紫色の部分)の上の点$${{\rm P}(p, q, r)}$$は,
$${xz}$$平面上の曲線$${z=e^{-x^2}}$$の$${x\geqq 0}$$の部分と
$${x}$$軸および$${z}$$軸に囲まれた領域(下の図の茶色の部分)の上にある
なんらかの点$${\rm Q}$$が$${z}$$軸に関する回転で移った点である.
$${\rm P}$$と$${\rm Q}$$は$${z}$$座標と$${z}$$軸からの距離が等しいので, $${{\rm Q}(\sqrt{p^2+q^2}, 0, r)}$$である.
したがって, $${xz}$$平面上の位置関係について
$${0\leqq r\leqq e^{-(\sqrt{p^2+q^2})^2}=e^{-(p^2+q^2)}=e^{-p^2}e^{-q^2}}$$
がいえる.
$${\rm P}$$が断面$${\alpha_k}$$にあれば, $${p=k}$$であり,
また$${-b\geqq q\leqq b}$$なので,
$${\alpha_k}$$の面積$${T(k)}$$は,
$$
\begin{aligned}
T(k)&=\int_{-b}^b e^{-k^2}e^{-q^2} dq=e^{-k^2}\int_{-b}^b e^{-q^2} dq\\
&=e^{-k^2}I(b)
\end{aligned}
$$
したがって, $${V_2(b)}$$について,
$$
\begin{aligned}
V_2(b)&=\int_{-b}^b e^{-k^2}I(b) dk=I(b)\int_{-b}^b e^{-k^2} dk\\
&=\left\{I(b)\right\}^2 &(証明終)
\end{aligned}
$$
(3)
(2)により, 正の数$${c}$$に対し, $${V_2(c)=\{I(c)\}^2}$$であるので,
まず$${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_2(c)}$$を求める.
半径$${c}$$で$${z}$$軸を中心軸とする直円柱面
4平面$${x=c}$$, $${x=-c}$$, $${y=c}$$, $${y=-c}$$で囲まれてできる正四角柱
半径$${\sqrt{2}\ c}$$で$${z}$$軸を中心軸とする直円柱面
の3つの立体は, この順番に周および内部に含まれるので,
$$
V_1(c)\lt V_2(c)\lt V_1(\sqrt{2}\ c)
$$
ここで, (1)より
$${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_1(c)=\lim_{c\to \infty} \pi (1-e^{-c^2})=\pi}$$
また, $${c'=\sqrt{2}\ c}$$とおけば, $${c\to \infty}$$のとき$${c'\to \infty}$$であるから,
$${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_1(\sqrt{2}\ c)=\lim_{c'\to \infty}V_1(c')=\pi}$$
以上より, はさみうちの原理によって,
$$
\displaystyle \lim_{c\to 0} V_2(c)=\lim_{c\to 0} {I(c)}^2=\pi
$$
正の数$${c}$$によらず$${I(c)\gt 0}$$だから,
$$
\displaystyle \lim_{c\to \infty} I(c)=\boldsymbol{\sqrt{\pi}}
$$
考え方2 ((3)のみ・解答例は省略)
(3)の考え方として, そもそも$${V_1(a)}$$が$${a\to \infty}$$のときに収束すれば,
その値は$${\mathcal{S}}$$と$${xy}$$平面に挟まれた空間領域の体積になるはずです.
またその体積が存在するならば, $${V_2(b)}$$について$${b\to \infty}$$としても同じ値に収束するはずです.
つまり$${\displaystyle \lim_{c\to \infty} V_1(c)=\lim_{c\to \infty} V_2(c)}$$というわけです.
上記を解答にまとめればそれ以外は同じですので,
対応する解答例は省略します.
まとめ
以上, 第6回垂れ流し数学模試の理型第5問の解答をお届けいたしました。
空間図形の性質を用いた積分の極限値の導出でしたが、いかがでしたでしょうか。
今回取り上げた「ガウス積分」については、よく、
大学で習う「重積分」の「広義積分」による証明が使われます。
実際、この問題の解答提出者(理型)の方でも重積分を利用した解法をとる人が多かったです。
しかしながら、この「重積分」の「広義積分」の部分は、
やっていることは本問の内容と同じことになります。
つまり、「ガウス積分」の導出は、実は高校生でも理解できる形に持っていけます。
この点が本問を出題した意図でした。
実際に、2015年の東工大でも、極限までは出していませんが、
これと同様にして考える問題が出ています。
確かに背景事情を知らない人にとっては厳しい問題だったかもしれません。
しかし、(3)は工夫が少し必要ですが、(2)までなら、
入試問題でよく登場する、立体の体積の問題とやることはそんなに変わらないはずです。
なお、ガウス積分の導出には「重積分」の「広義積分」以外にも、
「ガンマ関数」と「ベータ関数」を用いた方法もあります。
この2つも大学数学で登場しますが、面白い性質をもっている関数ですので、
興味がある方は調べてみるとよいかもしれません。
それではこの記事を終わりたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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