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Vol.62 HILLOCK訪問記

「育てられる」から「育つ」へ

先日、HILLOCK初等部世田谷校さんを訪問してきました。
そうです
我らがEDUBASEの名パーソナリティ、そして、成長ジャンキーである、
まーてぃ君の働いている学校です

初めて降り立った用賀駅から歩いて向かう道すがら、まるで新しいカフェを探検するようなワクワク感がありました。
「どんな学びの場が広がっているのだろう?」と、胸が高鳴りました。

ヒロックに到着したのは朝の9時前。
すでに活動は始まっていて、教室に足を踏み入れると、子どもたちが輪になって座っていました。
その中心には「シェルパ」と呼ばれる大人たち。
普通なら「先生」と呼ばれる立場の人ですが、ヒロックでは「伴走者」という意味の「シェルパ」と呼んでいるのです。
その名の通り、彼らは教えるのではなく、子どもたちの学びを支え、共に歩む存在でした。

「朝の会」じゃなくて「サークル」

まず最初に行われたのは「サークル」と呼ばれる時間。
学校でいう「朝の会」とは違い、シェルパが一方的に話すのではありません
もちろん1日のおおまかな予定は紹介しますが、
主となったのは子どもたちが「今日話したいこと」を自由に共有すること

例えば、ある子は「今朝、ここに来る途中で転んじゃったんだけど、どうしたらいいかな?」と話し始めました。
すると、周りの子どもたちが「靴ひも、ちゃんと結んでる?」とか「歩きスマホしてたんじゃない?」と、まるでSNSのコメント欄のように次々と意見を出していくのです。
「登下校の安全」というテーマが自然に生まれ、気づけば立派なディスカッションになっていました。

ここでは「先生が決めた議題に沿って話す」のではなく、「子どもたちが気になることを話し合う」。
この違いが、主体的な学びの第一歩なのだと感じました。

「自由進度学習」って本当に自由なの?

次に始まったのは「自由進度学習」。
名前だけ聞くと、「放任主義で、好き勝手に勉強するのかな?」と思うかもしれませんが、実際は全く違いました。

子どもたちは「スクールタクト」というアプリを使い、その日の学習目標を自分で設定します。45分の学習時間を15分ずつ区切り、
「①漢字練習」「②算数の文章問題」「③読書」
といった具合に、自分のペースで進めるのです。

ただし、ここで重要なのは「シェルパの役割」。
彼らはただ見守っているわけではありません。
一人ひとりの学習内容をチェックし、「昨日の課題と比べて、今日はどう取り組む?」と問いかけたり、「この問題、もう少し難易度を上げてもいけそうじゃない?」と声をかけたりします。

まるでパーソナルトレーナーのように、その子に合ったアドバイスを提供するのです。
「自由」とは「放置」ではなく、「適切な支援のもとで自分の選択をすること」なのだと実感しました。

「休憩時間」がない学校?

ヒロックでは、決まった「休み時間」がありません。その代わり、子どもたちが自分で「今は5分休憩しよう」と決めて、シェルパに宣言するシステムになっています。

「でも、それってサボる子が出るんじゃない?」と思うかもしれませんが、意外にもそんなことは起きませんでした。
むしろ、自分で時間を管理する習慣が自然と身についているのです。

ちょっとした時間管理術が身につく仕組みが、すでに小学生の段階で取り入れられていることに驚きました。

読み書きは大切

お昼前には「数と理論」「文章の読み取り」。
これは、算数や国語の学びを「単元」ではなく「身近な疑問」や「物語」からスタートしてその教科の分野のエッセンスをみんなに味わってもらう時間です。

この日は、「365日って、なぜ365日なんだろう?」という疑問がテーマになりました。
「地球の自転?」「太陽の周りを回る時間?」といった意見が出てきて、子どもたちは自然と問いに対しての自分の意見を持っていました。
エジプトの歴史からどうして、エジプトだけなのか、24時間はどこから?などと数の成り立ちにどんどんと子どもたちは引き込まれていきました。

このように、「知識を詰め込む」のではなく、「自分の疑問から学ぶ」。
これこそが、学びの本質なのではないかと思いました。
実際は、この問いをクリアするために「数」について学習をどこに定めるかを次回の自由進度に入れる計画をしている子もいました。

「クラス会議」で民主主義を学ぶ

午後には「クラス会議」が開かれました。
これは、クラス運営や日々の困りごとを話し合う場です。

この日は、たまたま話題がシェルパから
話題になったのは「掃除の分担」。
ある子が「掃除の時間、みんな何やろうかなってなってるよね?」と指摘すると、「それは〇〇くんだけでしょ!」と即座にツッコミが入る。
そこから「掃除とは?」「掃除はどこまでできるか?」について話し合いが進んでいきました。

ここで興味深かったのは、「多数決がゴールではない」という点です。ただ多数決で決めるのではなく、納得するまで話し合うプロセスが大切にされていました。

「民主主義って、こういうことなんだな」と、改めて考えさせられました。

熱い放課後タイム

子どもたちが帰ってからがまた話が熱い
どうしても学校の放課後というのは事務的な雰囲気で進んでいくのですが
そういった事務的なものではなく(ちょっとはあるかw)

・子どもたちの今日の見取りについて
・教科に近い学習の時間でのエッセンスの方向性
・サークルを含めた子どもたちの個人としての成長と全体の成長
・自分たちの発言によって影響されてしまった部分

こういったことをシェルパ同士で意見交換しているのだ
一人一人の見取りはすぐにクラウド上で共有され互いの視点の違いを知ることができるのだ

学校でよくある「私から見たら〇〇さんは〜」というのをしっかり共有するのだ
しっかりというのはなんとなくではない
「どういうアプローチだから」や「ここの関わりから考えて〜」など根拠があり非常に納得させられるものばかりだった

こういう時間こそが教育というものを生業にしている職業の人間には必要なのだ

ここでこうやって子どもたち自身が育つから大人もより次へと育つことができるのだ

「育てられる」から「育つ」へ

HILLOCKで1日を過ごしてみて、最も強く感じたのは「子どもが自分で育つ環境が整えられている」ということでした。

途中で学校長である蓑出先生もお越しになって、長くお話しすることはできなかったのですが、以前のEDUBASE TVで語っていらっしゃったように子どもたち自身を非常に大切になさっているのがわかりました

学校では、どうしても「先生が計画し、子どもはそれに従う」構造になりがちです。しかし、HILLOCKでは「子ども自身が計画し、先生は伴走する」という形が徹底されています。

これからの社会では、「言われたことをやる」だけでは生き残れません。「自分で考え、選択し、行動する力」が求められます。その力を育てるために、私たち教師はどうすればいいのか?

HILLOCKでの経験を通じて、そのヒントをたくさんもらいました。

もしかすると、教育の未来は、「教える」のではなく「育つ環境をつくること」なのかもしれません。

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