【活用事例:塗布型半導体プロセス】有害な溶媒の代替溶媒の探索
1.代替溶媒の選定プロセスをラクにしたい
塗料や次世代半導体材料の塗布プロセスのインクの開発現場において、材料の既知の良溶媒が環境・人体への有害性が高く、使用が困難なことがあると思います。こんな時、代替溶媒を探すのに苦労することはありませんか?
本記事では、塗布型半導体デバイスのインク開発を想定し、ハロゲン系溶媒が良溶媒であるpoly-TPDの代替溶媒を、一切実験をせずに探索してみたいと思います。
2. poly-TPDの溶解度パラメータを求める
まずはpoly-TPDの溶解度パラメータを分子構造から推定して求めます。分子構造の入力が複雑で面倒な場合は、SMILES記法を用いることもできます。
計算結果を確認すると、溶解度パラメータは(dD:18.3, dP:3.6, dH:6.8)と推定されました。poly-TPDの販売会社であるLuminescence Technology Corp.によれば、poly-TPDはクロロホルムやクロロベンゼンに可溶です(参考:こちら)。計算結果にクロロホルムとクロロベンゼンの溶解度パラメータをグレーでプロットすると、poly-TPDの溶解度パラメータと隣接しており、良溶媒であることが示唆されています。
poly-TPDの溶解度パラメータが推定されましたので、ハロゲン系溶媒を除いたデータセットを用いて、混合溶媒を含む良溶媒を探索します。
3. poly-TPDの良溶媒を探索する
求めた溶解度パラメータから、良溶媒の探索を行います。今回はstandardプランで探索できる溶媒74種類*から、ハロゲン系溶媒を除いたデータセット用いて、poly-TPDの良溶媒を探索します。
*アップデートにより155種類の溶媒から探索できるようになりました
4. 結果は…
SoluVisionが予測した溶媒は、トルエンとベンジルアルコールの混合溶媒でした。その他にもハロゲン系溶媒以外で構成された混合溶媒が複数提案されています。クロロホルムとクロロベンゼンの溶解度パラメータをグレーでプロットすると、今回提案された混合溶媒のほうが、poly-TPDの溶解度パラメータに近い位置にあります。したがって、ハロゲン系溶媒と同等かそれ以上の溶解性を持つ溶媒であることが期待されます。
このように、実験をする前に溶媒を絞ることで、実験コストを大幅に減らすことが可能です。今回の事例では、ハロゲン系溶媒外の溶媒にはあまり制限をかけていませんが、溶媒データセットを使用できる溶媒に絞って設定することで、さらに詳細な検討が可能です。
溶媒の選定にDXを。ぜひご自身の扱う材料で試してみてください。
5.まずはやってみよう
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