【活用事例:界面活性剤と添加剤】界面活性剤と消泡剤の親和性評価
1. 母材と添加剤の相性を推測したい
材料の製造工程にて発生する気泡の消泡技術は、材料の分散不良や品質への影響を抑えるために重要です。この場合、消泡剤を添加して化学的に気泡を除去する解決策がとられることが多いと思います。しかし、同系統の消泡剤を用いても母材との相性で効果の程度が異なることがあります。母材と添加剤の相性を定量的に分析し、添加剤の選定指針にフィードバックすることができれば、製造プロセスの最適化の加速につながると考えられます。
こちらの文献において、界面活性剤であるポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(PEL)と、数種類の消泡剤のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の距離と消泡効果についての相関を議論し、消泡剤の選定指針を可視化する事例が報告されています。
上記の事例を参考に、SoluVisionを用いてPELに対する消泡剤2種類の親和性の違いを可視化してみたいと思います。この例に限らず、様々な材料同士の親和性の比較も可能です。
2. 界面活性剤の溶解度パラメータを求める
まずは、PELの溶解度パラメータ(SP値)を求めます。界面活性剤のように親水性と疎水性の分子構造を持つ場合は、親水性の部分と疎水性の部分のそれぞれに対してSP値を導出することが可能です。今回は前述の文献に報告されているPELの良・貧溶媒の評価結果のうち、SoluVisionにて評価可能な溶媒の評価結果を用いてSP値を求めます。
※1つの材料に対し2つのSP値を導出する場合は、材料カテゴリより「界面活性剤」を選んでください。
計算結果を見ると、2つのSP値が計算されています。一般的に親水性の部分は、疎水性の部分と比較して水素結合項dHが大きくなる傾向があります。それを踏まえると、親水性の部分のSP値は(dD:15.2, dP:20.4, dH:21.9)、疎水性の部分のSP値は(dD:20.0, dP:9.0, dH:5.4)と想定されます。
RはPELの2つのSP値を中心とするグレーの球の3Dマップ上の半径を表しています。PELのSP値を中心にグレーの球が表示されており、グレーの球内の溶媒が良溶媒であることを示していますので、実験結果を反映した結果が得られていると考えられます。
この結果は、アプリ内で下記の共有コードを入力すると参照可能です。
PEL:01J2QN6H8W33P0WCFH90ZWCTQN
※上記共有コードで結果が見れない場合は恐れ入りますが公式サイトのお問い合わせよりご一報ください。
PELのSP値が計算されましたので、次に消泡剤のSP値を求めます。
3. 消泡剤の溶解度パラメータを求める
前述の文献に記載されている消泡剤のうち、Af-AとAf-Cとラベルされた消泡剤のSP値を、PELと同様に評価します。文献にならい、上記の消泡剤のSP値は1つとして計算を行いました。
注目するポイントは、3Dマップ上におけるAf-AとAf-CのSP値の位置とそれらを中心とするグレーの溶解球のカバー範囲の違いです。それぞれの良・貧溶媒の違いが示すように、各種溶媒および母材に対しては親和性が異なることが示唆されます。
前述の文献によれば、PELの作る気泡を消泡する場合、PELの親水性の部分と消泡剤の親和性が高いことが重要です。PELの親水性の部分のSP値と消泡剤のSP値の距離が近いほど、親和性が高いことが示唆されます。
この結果は、アプリ内で下記の共有コードを入力すると参照可能です。
Af-A:01J2QNB3QD3806RKH2XCNVVPX0
Af-C:01J2QNBZMTQTFPEJ2EB8AV905J
※上記共有コードで結果が見れない場合は恐れ入りますが公式サイトのお問い合わせよりご一報ください。
これらの結果と、PELの親水性の部分のSP値を比較し、消泡能力と溶解度パラメータの距離に相関があるか確認します。
4. 結果は…
PELの親水性の部分とAf-A、Af-CそれぞれのSP値の距離をそれぞれ計算します。3Dマップ上におけるSP同士の距離は右下の三角定規のアイコンをクリックし「測距モード」にすることで算出できます。
測距の結果、PELとAf-Aの距離は8.0、Af-Cの距離は6.7で、Af-CのほうがPELの親水性の部分とのSP値の距離が近く、消泡能力が相対的に高いことが示唆されました。
前述の文献によれば、消泡能力の評価結果はAf-AよりもAf-Cのほうが高いと評価されています。このように、3Dマップ上における材料同士のSP値と比較することで、材料同士の相性を定量的に評価して添加剤の選定を行うことが可能です。
今回は界面活性剤について焦点を当てましたが、SP値が計算できれば材料同士の親和性を評価することができます。粒子材料と樹脂の系や、ゴムへの添加剤の親和性、イオン液体の評価等、様々な系における親和性を視覚的に評価することができます。
溶媒の選定にDXを。ぜひご自身の扱う材料で試してみてください。
5. まずはやってみよう
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