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岡本喜八「激動の昭和史 沖縄決戦('71東宝)」
岡本喜八が1967年に撮った「日本のいちばん長い日」の大ヒットにより、東宝は「8.15シリーズ」としてシリーズ化しました。その第5作「沖縄決戦」で岡本が再びメガホンを取りました。
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世界の戦争史上でも最悪とされる沖縄戦の模様を、日本側の視点から克明に描いています。特に大規模な戦闘シーン(実際は米軍による虐殺シーン)を再現するためには通常の映画撮影では困難で、中野昭慶による特撮が駆使され、1100分の1の沖縄全島の模型や200分の1スケールの戦艦大和などが作られました。
この映画をスピルバーグの「プライベート・ライアン」の冒頭場面(ノルマンディ上陸作戦)と比べる意見がかなりありますが、この「沖縄決戦」は、あの冒頭場面が2時間30分続くのです。しかもノルマンディ上陸作戦はどれほどの兵士が死亡しようとも最後は連合軍の勝利が分かっていますからまだいいです。「沖縄決戦」は日本の敗北が最初から分かっていて、かつ、民間人の死者の方が軍人より遥かに多いのです。沖縄戦における沖縄県民の死者は、人口の4分の1でした。つまり、どこにも救いがない映画です。
庵野秀明監督は岡本喜八の大ファンであることは有名ですが、特に「沖縄決戦」は100回以上観たと言います。こんな、民間人が次々と虐殺されていく陰々滅々とした映画を100回観るとは、尋常な神経ではありません。
米艦隊が沖縄本島に迫ってきたとき、伝令が「敵艦の数が多過ぎて海が見えません! 敵艦7分で海が3分!」という台詞は「トップをねらえ!」で使われてますし、米軍が上陸してガマ(洞窟)の入口に火炎放射器を向け、中から女性の悲鳴が聞こえなくなるまで火を放つ場面は「劇場版エヴァンゲリオン」でも引用されています。
また米軍の戦車が上陸して村に迫る前で発狂した老婆が一心不乱に沖縄民謡を踊る、忘れられないシュールな場面があります。
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現実の戦争では、軍人だけではなく民間人もどんな目に遭うかをこれでもかと示した、全く情け容赦がない映画ですが、この映画の岡本喜八監督始め多くのスタッフが従軍経験者であり、「本当の戦争とはこういうものなのだ。いや、これは映画だから何億倍もマシなのだ」というスタッフの叫びが聞こえてくるような映画です。
「激動の昭和史 沖縄決戦('71東宝)」
小林桂樹 / 丹波哲郎 / 岡本喜八
定価: ¥ 4700
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↑プライムビデオ「冲縄決戦」