【世界のミフネその1】「価値ある男('61メキシコ)」
世界のミフネ、海外主演第1作。「七人の侍」「用心棒」など、一連の黒澤映画で世界にその名を轟かせた三船敏郎。当然、各国映画界から出演依頼が殺到しました。しかし「間違った日本人観」の映画には断固として出ない主義の三船敏郎が最初に選んだのは、意外や意外、メキシコ映画でした。
「価値ある男」で三船は生粋のメキシコ人を演じます。三船は日本人としては彫りの深い顔ですが、どう見たって日本人。それがインディオの血が混じっているとはいえスペイン系民族であるメキシコ人、しかもネイティブのメキシカンを演じるとは、何がどうしてこうなったのでしょう。
舞台はメキシコの村。酒と喧嘩と博打に明け暮れ、村の鼻つまみ者アニマス(三船敏郎)の夢は、年一回のお祭りの主催者に選ばれて栄誉ある〝マヨドール〟になることでした。何とか極道者の夫を更生させようとする妻の願いも虚しく、乱暴を働いて投獄され、荒れた生活に舞い戻るアニマス。果たして彼は栄誉あるマヨドールになれるのか?
という話なんですが、これ、浅草三社祭で神輿を担ぐ全身刺青のヤクザをトム・クルーズが演じるとか、岸和田だんじり祭りで先頭に立って神輿を引き回して注目を集める役をジャン・ポール・ベルモンドが日本人の振りして演じるみたいなものですよ。
相当なキワモノ映画だろう、と思って観始めたんですが、撮影がしっかりしていて驚きました。三船敏郎もメキシコの田舎オヤジになり切ってます。あまりに堂々とメキシコ人を演じていて、周囲の役者も監督も「三船はメキシコ人なんだ!」と疑わずに作ってますので、観ていて違和感がなく、驚きました。
三船敏郎、この映画のためにスペイン語のセリフを全部覚えて撮影に臨んだそうですが、最終的に向こうの役者の声に吹き替えられていてガッカリしたそうです。まあ、無理もないと思います。ただ三船はスペイン語で話しているので、吹き替えの口の動きに違和感がなく、これはこれで成功しています。
三船敏郎の映画としては珍品に属すると思いますが、しっかりした造りの映画なので、オファーを受けるにあたって先方の監督の過去の仕事を観た上で判断したのでしょう。
「間違った日本観」の映画には出ない主義の三船敏郎ですが、メキシコ人を演じるなら、間違っていようが関係なかったのだと思います。
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