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セルゲイ・ボンダルチュク「戦争と平和」('65ソ連)〈5枚組〉

「風と共に去りぬ」がもう2度と作れない作品だとしたら、ソビエト映画「戦争と平和」は2度と作れない「風と共に去りぬ」が10本は作れるくらいの途轍もない大作です。

旧ソビエト連邦がロシア革命50周年を記念し、共産主義国家の威信を全世界に示すべく現在のドル換算で7億ドルの巨費を投じて構想5年、撮影準備に2年、1962年に撮影を開始して1965年に第1部公開、1967年に第4部が公開されて完結しました。製作実に10年がかりの超弩級大作です。

その途方もない製作費から「アラスカが買い戻せる」とまで言われましたが、実はこの製作費に人件費は入ってないと言われています。共産国家であるソビエトでは、役者もスタッフも国家公務員であり、製作費とは別計算だと言うのです。

「ボロジノの戦い」の撮影に投入された12万人のソビエト陸軍兵士も、製作費に計上されているのか分かりません。このことから、ソビエト映画「戦争と平和」は人類史上最も製作費がかかった映画だと言われています。

見せ場は12万人のソ連軍を投入してロシア軍とナポレオン軍の戦いを完全再現した「ボロジノの戦い」と、第4部にナポレオンがモスクワに進軍して町に火をつける「モスクワ大炎上」の場面。

まずボロジノの戦いではCGが無い時代にどうやって撮影したのか見当がつかない場面のオンパレードなのですが、驚くのは地表近くからカメラが垂直上昇してワンカットで雲を突き抜ける場面があるのです。これ、どうやらこのワンカットのためにロケットを打ち上げたそうなのです。

そして最後のクライマックスであるモスクワ大炎上シーンですが、この撮影のためだけに広大なロシアの大平原に2年かけて超巨大オープンセットで19世紀初頭のモスクワ市街を建設し、これに火を付けて撮影したというから驚きです。

このディスクはソビエト映画を扱っているIVCが制作販売したものです。IVCは旧共産圏の珍しい映画を出していて好感が持てるのですが、いつも画質はイマイチなのです。しかしこの5枚組は高価なだけあってデジタル修復が施され、全4部構成6時間半が完全収録されているばかりか、メイキングや多くの特典映像が収録されています。元の定価は1万4800円しました。

再生一回のみ。盤面・箱ともに良好です。あなたもこの映画を観て、「国家予算の凄さ」「CGが無い時代の本物の迫力」をぜひ体感してして下さい!


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