【キューブリックが出来るまで】「スタンリー・キューブリック初期作品DVDセット」
※「現金に体を張れ」と「突撃」は未開封新品です。「恐怖と欲望」「非情の罠」は再生に問題なし。
スタンリー・キューブックの長篇処女作「恐怖と欲望」「非情の罠」「現金に体を張れ」「突撃」の初期4作品です。「恐怖と欲望」は1953年、「突撃」は1957年に作られました。
キューブリックは17歳で撮影した写真が雑誌に売れ、カメラマンデビューしました。その5年後にドキュメンタリー2作を自主制作し、生命保険を解約した金と親戚からの借金で初の長篇劇映画「恐怖と欲望」を自主製作します。
監督・脚本・撮影・編集は全てキューブリック。出演者の1人に後に映画監督になったポール・マザースキーがいます。
物語は時代も場所も定かではない架空の戦争に従軍した兵士4人が、敵地の森に墜落し、そこから味方の陣地までどうやって帰還するかを描いたもの。途中で敵地の民間人を殺害したり女性を強姦したりします。そして互いに疑心暗鬼になって味方同士で殺し合うというお話。
撮影は立派ですが、「観念の戦争」を描くもので、筋も台詞も観念的。素人の自主映画の域を出るものではありません。キューブリックもこの処女作は「素人の作品」だと封印し、長らく上映を許しませんでした。
「非情の罠」も自主制作に近い作品。ボクサーがギャングのボスの情婦に思いを寄せ、彼女をギャングから救おうとするが、ボスは手下を使ってボクサーを脅迫します。かなりシンプルな暗黒街もので、80年代にオールナイトでこの映画を初めて見た時、ラストのとってつけたようなキスシーンに場内から笑いが起こりました。
昔、映画プロデューサーの貝山知弘さんとこの映画を観た時、貝山さんは初視聴でしたが、「キューブリックにもこんな時代があったと知って安心しました」と言っていました。ただし夜のニューヨークの街頭撮影が素晴らしく、クライマックスのマネキン人形倉庫でのボスとボクサーの死闘の場面に非凡な映像センスを感じます。キューブリックはカメラマン時代にニューヨークの夜景を撮影した素晴らしい写真を何枚も撮っていました。
「現金に体を張れ」も暗黒街ものですが、習作時代を経てコツを掴んだのか、前2作と違い、まるで別人が作ったかのような完璧な完成度の作品です。
競馬場の現金を強奪する犯罪チームの話です。まずリーダーが立てた緻密な計画を仲間に説明し、その計画通りにそれぞれの仲間が実行するのですが、些細なミスから計画が破綻していく様を、まるで将棋かチェスの試ゲームを見るかのように描く作品です。特に同じ時間内の各メンバーの行動を、1人の行動のある段階まで行ったら時間を巻き戻し、次に別メンバーの行動を最初から追うという、何回も時間を交錯させる描き方はタランティーノの「パルプフィクション」に露骨な影響を与えています。
「突撃」は、「現金…」を観て感銘を受けたハリウッドのトップスター カーク・ダグラスが、キューブリックの脚本を読んで出演を快諾し、プロデューサーまで引き受けました。
第一次大戦のフランス軍を舞台に、将軍の非情な命令で、全滅が分かっていながら無謀な突撃を指揮する大佐(カーク・ダグラス)の苦悩と葛藤を描きます。戦争シーンの撮影は実に見事で、何百メートルも続く塹壕を歩くカーク・ダグラスを追うカメラ移動、無謀な突撃シーン、敵の砲弾に防御一方となるフランス軍を見て、弛んでいるから喝を入れようと味方に向けて砲撃を命じる将軍、くじ引きで当たった兵士を銃殺することで作戦失敗の責任を負わせようとするなど、無謀な上層部の命令は何も旧日本軍の専売特許ではない、と思わせる戦争の狂気がこれでもかと盛り込まれています。
「現金」「突撃」ともに完全なキューブリックの映画というべきで、あの天才監督がどのようにして自己の作風にたどり着いたか、ぜひ作品を通して目撃して下さい。
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