「劇場版 うる星やつら2~ビューティフル・ドリーマー」('84キティ・フィルム)
目立つ汚れや傷はありません。再生にも問題は見られませんでした。
高橋留美子の70年代から80年代にかけての大ヒット漫画の、1984年に公開された劇場アニメ第2作です。監督は押井守。
押井は、テレビシリーズの演出をしながら劇場第1作「うる星やつら・オンリーユー」を監督しました。これは相米慎二「ションベン・ライダー」との併映でしたが、ある映画雑誌が相米作品を激賞する一方、押井の「オンリーユー」を「甘い甘い砂糖菓子のような映画」と評し、これにカチンと来た押井は、1作目は「お仕事」として作ったが、次の「ビューティフル・ドリーマー」では作家性において絶対に妥協しないことを決意します。
明日は主人公たちが通う友引高校の学園祭。生徒はもう何日も学校に泊まり込んで学園祭の準備をしていました。本物の戦車を教室に持ち込んで床が抜けかけたりと、学園祭よりも盛り上がる騒ぎ。
翌日、再び学園祭の準備が始まりますが、相変わらずの乱痴気騒ぎ。メガネが「みんな急げ! 何しろ明日は学園祭の初日だからな」と呟き、それを聞いてあたるはギョッとします。「そのセリフ、昨日も言わなかったか?」
もしかしたら、俺たちはもう何日、何ヶ月も「学園祭の準備」をし続けているのではないか?
ゾッとしたあたる達は、町の外に出ようとしますが、どうしても町の外に出られない。
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は、学園祭前日が永遠に無限ループする時空に閉じ込められる恐怖を描いたSFアニメで、高橋留美子の「砂糖菓子のような甘く楽しい世界」が、実は誰かの陰謀で作られた仮想の世界であり、本当の世界を探る哲学的とも言えるテーマの作品です。
ある意味それは「留美子ワールド」の否定とも言え、押井守の作家性を全開にしたことで熱狂的ファンが生まれた一方、原作者には「あれは押井監督の傑作かも知れないが,私の作品ではない」とすこぶる不評でした。
SFエンターテイメントの枠組みを使って、ここまで作家性を打ち出すことが出来るのか……! と、ある意味現在まで物議をかもしている「傑作」です。
なお、押井守のオーディオコメンタリーはこのDVDにしか入っていないため、Blu-rayよりDVDの中古価格が倍近く高いという逆転現象がおきています。
「劇場版 うる星やつら2~ビューティフル・ドリーマー('84キティ・フィルム)」
平野文 / 古川登志夫 / 押井守
https://amzn.to/3F4YwzK
↑PrimeVideo 「うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー」
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