ダリル・F.ザナック「史上最大の作戦('62米)〈2枚組〉」
ハリウッド最後のタイクーン(日本語の大君から来た言葉)と呼ばれたプロデューサー、ダリル・F・ザナックが製作した「史上最大の作戦('62米)〈2枚組〉」であります。
ノルマンディ上陸作戦の完全映画化はザナックの悲願でしたが、同じ時期20世紀FOXは「クレオパトラ」に天文学的予算を傾注したおかげで財政破綻の危機にありました。しかしザナックはこの映画の成功を信じ、アメリカからジョン・ウェインやヘンリー・フォンダ、ロバート・ミッチャムを、ドイツからはクルト・ユンゲルスなどのトップスターをかき集め、NATO軍の全面協力を取り付けたことでコストダウンを計りました。そのため第二次大戦中の本物の軍用機が画面に登場します。
この映画で特に見事なのは戦場を俯瞰で捉える大空撮のシーンで、延々何キロにも及ぶ空撮は、下界の風景全体を何キロにも渡って撮影用にセッティングしなければならず、考えるだけで気が遠くなります。ドイツ軍が占領するサント・メールの市街地に降り立ってしまった落下傘部隊の1人が着地に失敗して教会の塔にパラシュートが引っかかり、宙吊りになったまま下界で次々と撃ち殺されていく仲間を呆然と見守るしか無いシーン。戦場で起こり得たであろうリアリティがある場面で、この映画で最も有名です。今日でも舞台になったサン・メール・エグリーゼ教会の鐘楼にはパラシュートで吊り下がったアメリカ兵の人形がぶら下がっていて、観光客を驚かしているとか。
会社が倒産する瀬戸際で作られた「全く手を抜かない」超大作でしたが、ザナックは賭けに勝ち、映画は世界中で大ヒットしたばかりか、「クレオパトラ」で傾きかけていた会社の経営も持ち直したのです。こういう「博打」が打て、しかも勝つというのは大プロデューサーの重要な資質です。今ではこういう人物はなかなか居ないと思います。
ノルマンディに一番乗りで上陸する一等兵の役で無名時代のショーン・コネリーが出ています。彼はこの翌年「007ドクター・ノオ」で世界的な大スターとなりました。
ジョン・ウェイン / ヘンリー・フォンダ / ケン・アナキン
定価: ¥ 4700
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