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【不世出の怪優・土方巽】石井輝男「江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間」米国盤DVD

石井輝男の大問題作「江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間」の米国盤DVDです。米国のDVDはリージョンコードが違うので普通は日本のプレイヤーでは観られないんですが、この盤はリージョンフリーになっていて、日本でも普通に観られます。多分日本人の購入を意識したんだと思います。

というのは、この作品は長い間、日本国内でソフト化されなかったからです。やはりタイトルが引っかかったのでしょう。80年代と90年代にそれぞれビデオ化、DVD化が模索されましたが、サンプル盤まで作られながら発売されませんでした。

80年代には名画座のオールナイト上映の定番となっていたカルト映画ですので、ソフト化を望むファンが多かったのです。

それで、日本で出せないならアメリカで、と米国のメーカーがDVD化したのがこの盤です。案の定、私を含め日本人変態映画マニアが飛びつきました。それが2017年に日本でも解禁されてDVDが発売、隔世の感があります。

内容は、江戸川乱歩の「孤島の鬼」「パノラマ島奇譚」をベースに、人間椅子やら屋根裏の散歩者やら、乱歩の諸作品から断片的なイメージを脚本に織り交ぜ、もう乱歩チャンチャカチャンみたいな映画になってます。だから「江戸川乱歩全集」なんですね。

で、タイトルにある奇形人間、確かに出てくるんですけど、そんなに上手ではないメイクで出てきて、実は怖くない。しかしそれを上回って余りあるのが暗黒舞踏創始者・土方巽演じる奇形人間の親分なんですね。

土方の存在感がハンパではない。特殊メイクもへったくれもなく、暗黒舞踏の暗黒パワー全開で、画面に出てきたらもうそこは土方ワールドなんですよ。

この圧倒感は「見てくれ」としか言いようがないです。とにかく終始手足をクネらせており、目は普段でもギョロギョロさせていて、まともな演技が全く出来ない。不審者なんてものではないです。テレビには絶対出せない不気味パワーがあります。一言で言って「ヤバい人」なんですよ。

この土方巽、生まれつき手足の指にヒレがついていて、それがために人前に出ることができず、日本海に浮かぶ孤島に閉じこもって普通の人を拉致監禁して改造手術を施して奇形人間にしているんです。

男女を背中でくっつけて人工のシャム双生児にしたり。ただ、沢山出てくる奇形人間は、どう観ても土方巽の弟子の暗黒舞踏家総出演なんです。

それでもう、超展開に次ぐ超展開の嵐が吹き荒れて、最後に花火が打ち上がるんですが、それが男女の心中なんです。五体バラバラになった男女が「おとーさーん」「おかーさーん」と叫びながら宙を舞って「完」。

このラストシーンは語り草になっていて、この映画がオールナイト興行の定番になっていた大井武蔵野館では、このシーンになると場内から拍手が湧き起こるんですよ。

石井輝男は一生娯楽映画を作り続けた人なんですが、サービス過剰なんです。面白ければなんでも良いだろう、とばかりに速射砲のように面白いシーンをぶち込んだ結果、悪夢みたいな面白い映画になるんですよ。この映画が狂ってるのか、それとも俺の頭が狂っているのか、分からなくなる。

こんな映画が今ではアマゾンプライムビデオでも観られるんですから、今の若い人は幸せです。

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