「裸の町('48米)」
当時の映画製作はセット撮影が主流で、たとえジャングルだろうが砂漠だろうが映画会社のスタジオにセットを組んで撮影していました。ところがこの「裸の町」は、殺人犯を追う警察の地道な捜査を現実のニューヨーク市街でオールロケ撮影を行い、そのため劇映画にも関わらず極めてリアルな街を背景にしたセミ・ドキュメンタリーというジャンルを確立した作品として知られています。
そのザラザラとした映像のリアルな肌触りは世界中の映画に影響を与えました。黒澤明の「野良犬」やウィリアム・フリードキン「フレンチ・コネクション」などはその代表例だと言われています。
ファッションモデル殺人事件が起こり、マルドゥーン警部補(バリー・フィッツジェラルド)は彼女の婚約者が犯人だと目星を付けて追いかけます。
映画はまずニューヨークの街のスケッチ風描写で始まり、本作のプロデューサーでジャーナリストでもあるマーク・ヘリンジャーのナレーションによってストーリーが展開します。そのため、この映画は劇映画なのにまるでニュース映画のような感触を与えるのです。フィッツジェラルドはスターでしたが、それ以外すべて無名のキャスティングで固めたのも、セミ・ドキュメンタリーを狙った製作陣の意図でした。
クライマックスで犯人がウィリアムスバーグ橋の塔に追い詰められると、眼下にニューヨークの街が広がり、幸せそうな男女が何も知らずにテニスをしている光景が見えます。
「裸の町」は2007年に「文化的・歴史的・芸術的に極めて高い価値を持つ」と認められてアメリカ国立フィルム登録簿に登録されました。
中古品ですが、ネットで調べると中古価格でも2000円は下らないようです。未開封品は4000円から8000円もします。駿河屋では1880円で売られてましたので、これに送料を加えた価格で。
「裸の町('48米)」
バリー・フォッツジェラルド / ハワード・ダフ / ジュールス・ダッシン
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