デビッド・リンチ「イレイザーヘッド」リストア版('77米)
デビッド・リンチの「イレイザーヘッド」は1981年にまず「エレファントマン」が公開され、これがリンチの日本初上陸でしたが、それが大ヒットしたのでリンチの処女作であるこちらも公開されたのでした。
日本公開時のポスターには「この赤ん坊がエレファントマンのルーツなのか?」という全然関係がないキャッチコピーが付けられていましたが、何とか大ヒット作と関連付けようと宣伝会社が頭を捻ったのでしょう。もちろん「エレファントマン」とは何の関係もありません。
イレイザーヘッド(消しゴム頭)とは、主役の男の髪型のこと。製作に5年もかかったので、主演のジャック・ナンスは途中一度も髪型を変えなかったそうですが、全編通して見ると、カットによっては微妙に髪の長さが違います。
この映画は自主映画で、資金が尽きるとアルバイトをし、金が貯まったら撮影再開という涙ぐましい努力で完成しました。そのため、ドアノブを回して部屋に入るまでのカットに一年半を費やしています。
情け容赦のないリンチワールド全開の映画です。アングラ映画なのですが、とにかく内容が不気味で悪夢を見ているかのような映画です。最初に交渉した映画館からは上映を断られ、独立系映画館(ミニシアター)の深夜興行でようやく公開できました。初日は観客が24人だったそうです。
しかし内容の不気味さと撮影の見事さから徐々に観客が増え始め、「ミッドナイト・カルト」と呼ばれてロング・ランになります。これを見た監督でプロデューサーのメル・ブルックスがリンチに「エレファントマン」を監督させる決断をして、今日の大監督デビッド・リンチがあるのです。
深夜のミニシアターから人気が出るのはカルト映画の定番コースで、アレハンドロ・ホドロフスキーの「エル・トポ」もこのパターンでした。
この映画に出てくる赤ん坊は異様にリアルで、特にアップ撮影の気持ち悪さは生きているとしか思えません。スタンリー・キューブリックはこの作品の大ファンで、わざわざリンチの家に電話をかけてきて、「あの赤ん坊はどうやって撮影した? 教えろ」と迫ったそうです。しかしリンチは絶対に答えませんでした。そのため、生きた羊の胎児を撮影に使ったのではないか? という憶測が流れていますが、未だに謎のままです。
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