【虫プロ最後の作品】山本暎一「哀しみのベラドンナ」(米国版Blu-ray)
手塚治虫が創立した虫プロダクションは、1973年に倒産しますが、その直前、一本の劇場映画を完成させました。それが日本アニメーション史上最大の問題作「哀しみのベラドンナ」です。本作の製作時には手塚は虫プロの社長を退いており、本作にはノータッチ。
既に虫プロは「千夜一夜物語」「クレオパトラ」の2つの長篇を製作しており、これらはアダルト層に向けた長篇アニメーションで、かなり好評でした。手塚が育てたスタッフが「手塚抜き」で大人向きの長篇アニメを作るということで、スタッフの頑張りは物凄く、「よく映倫を通ったな」と思わせるほど過激な性描写が続出しました。
中世フランスで迫害された女性が悪魔と契約して魔女になり、最後は火炙りの刑に処せられる悲しい話です。悪魔は最初は小さな喋るペニスなのですが、ヒロインが魔力で村人を堕落させるごとに巨大な魔王となります。声を演じた仲代達也は「私も役者を長年やってますが、ペニスの役はこれが最初で最後です」と言ってました。
「哀しみのベラドンナ」製作時には虫プロの経営は悪化しており、監督の山本暎一と美術の深井国を中心とした少数精鋭主義で制作されました。そのため、この作品の制作には長い時間がかかりました。
深井国は貸本劇画出身。60年代にイラストレーターに転向し、欧米風の女性画が得意だったことから、女性ファッション誌などで売れっ子でした。とてもオシャレな画風ですが、それが耽美的なポルノアニメの美術を担当したのです。
この作品の最大の特徴は静止画が多用されていることです。ドラマ部分は静止画、見せ場になるといきなり動く変わった造りのアニメです。深井国の美術レベルが非常に高く、全く手抜きには見えません。
ここまで美術が中心になった長篇アニメーションはこの作品くらいではないかと思います。
作画監督の杉井ギサブローを中心に、前田庸生・辻伸一・勝井千賀雄・羽根章悦・奥山玲子などが原画を担当、出崎統は既に演出家でしたが、ここではアニメーターとして原画に参加。
「哀しみのベラドンナ」は、日本では表現が斬新過ぎて受けませんでしたが、欧米ではカルト人気が出、今でもアートアニメとして評価が高いです。
日本ではDVDが出ていますが、Blu-rayは欧米でしか出ていません。今回出品するのは米国盤で、非常に画質が良いです。日本でも普通に再生可能。再生一回のみ。
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