【石井聰亙】「突撃!博多愚連隊」【最後の8ミリ大作】
石井聰亙の「高校大パニック8ミリ版」がホップだとすると、「狂い咲きサンダーロード」がジャンプ、その中間の「ステップ」にあたる作品がこの「突撃!博多愚連隊」になるのかもしれません。
処女短編「高校大パニック(8ミリ版)」が学生映画としては破格の注目を集め、日活によって商業リメイクされたことは、日本のサブカルチャー史における一つの事件でした。
しかし現実は、映画会社の話題作りで、現場では終始「お客さん」扱い。実権は共同監督だったベテラン監督の澤田幸弘が握っていたのです。結果、石井としては「自分の作品」とはどうしても認められない映画になってしまいました。 石井としては無力感・屈辱感が残る経験になってしまいました。
しかし一応「監督」ということで、会社からはそれなりのギャランティが支払われ、その資金で再び自主映画として製作したのが「突撃!博多愚連隊」になります。 舞台は石井監督の郷里である福岡県の博多。ヤクザ未満のチンピラ達がクダを巻いて怠惰な生活を送っていますが、偶然、本物のピストルを手に入れたことから、頭が上がらなかった地元のヤクザを射殺し、銀行強盗を働いて、最後には幼稚園バスを乗っ取って幼稚園に立て籠り、警官隊相手に無謀で無駄な抵抗を繰り広げます。
「俺たちに明日はない」ではありませんが、本当に明日がない愚連隊が、あがきにあがいて砂地獄に落ちていく映画です。
最初の2作に比べると映像はパワーアップしていますが、所詮は8ミリ、絵も音も劣悪です。ただでさえ音が悪いのに、博多弁の早口でまくしたてるセリフは正直、何を言っているのか分かりません。しかし手持ちカメラによる画面の躍動感、疾走感はさすがで、その印象が強く残ります。
石井は結局、大学を中退しますが、卒業制作として準備していた映画があり、中退しても撮影続行して完成にまで持って行ったのが「狂い咲きサンダーロード」になります。 ここに来て自主制作の稚拙さは微塵もなく、初期作の衝動はそのままに、自主映画の枠を超えた作品を作ってしまいました。それは東映によって劇場公開され、彼は日本のインディーズ映画の星になったのです。
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