終わりなき旅〜早瀬耕『未必のマクベス』
「休暇は、終わってしまいましたね」
「永遠に続く休暇はないから、しょうがないよ」ぼくは、蓮花からパスポートを受け取って、チェックイン・カウンターに見知らぬ男のパスポートと並べて置く。それが、帰る場所を失う旅の始まりであっても後悔はしないと、地上係員のチェックイン手続きの間、何度も自分に言い聞かせた。きっと、四年前の澳門国際空港で、鍋島も、ぼくと同じ気持ちになったことだろう。ぼくは、どこかにいる鍋島冬香を捜し出さなくてはならない。
物語の幕開けIT企業のごく平凡なサラリーマン