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TRPGにランダム展開生成システムを作るときに気をつけたいこと
とあるTRPGに対して、汎用かつリッチな展開がランダム生成されるサプリメントを頑張って作ってる友人にたいして、もったいないなあ。と思って、少し話をしました。
あまたあるTRPGのシステムやサプリメントに、ランダムに展開を生成するシステムってありますよね。ランダム展開生成。古典的かつアルアルなシステムで、誰でもそれっぽい展開を生成できることは、ゲームマスターなりたての人に対して易しく見え、評価を得やすいです。
うまく使えば、面白いセッションの元ネタを作ることもできる(かもしれない)こともあり、たまにTRPGシステムに同梱されていますね。
じゃあ、TRPGのランダム展開生成の妙味、つまり、一番美味しい部分とはどこでしょうか。
結論から言うと、ランダム展開というのは個々の展開が面白い、のではなく、展開と展開の間にあるつながりができていくのが面白いのです。
例えて言えば、「あ」と「い」の列挙が面白いのではなく、「あい」というつながりが、愛だったり藍だったりを想像させて、それが面白いのです。
もちろん「ランダム展開生成システムのいいところはゲームマスターの腕を選ばないこと」という意見もあるでしょう。「ゲームマスターになるのは誰でもできるし、ランダム展開を使えばゲームマスターは簡単になれる」。それはそうです。しかし、僕はこれらの意義には疑いを持っています。
そも、ランダム展開だけでゲームをしたとして、ランダム展開をなぞるだけで、そのゲームマスター「は」はたして面白いのでしょうか。
また、ランダム展開だけでゲームをするなら、そもそもゲームマスターはいらない、プレイヤーの得意な人が余技でやればいい。となりませんか。
加えて申せば、誰がやっても同じになるなら、それが自分である必要はありませんよね。
面白くない役柄で、しかもそもそもいらない役で、人に押し付けても何ら問題ない役、をわざわざやる人はいないですよね。
というわけで、ランダム展開の生成を頑張ることは、最終的にそのシステムのゲームマスターを、ひいてはゲームマスター自体を減らすだけだと、僕は思います。
そのうえで、あえてランダム展開生成システムを使って良いゲームマスタリングをするならば、「ゲームマスターがプレイヤーへのもてなしに注力するための支援ツール」、という扱いにするのがいいでしょう。
ゲームマスターとして、プレイヤーをもてなすために必要なこととは何かを考えるうえで、一時的な最低限の土台を生成する(スキャフォールディング(Scaffolding))のに、何回かランダム展開生成ツールを回してみる。のは、ありだと考えます。
もちろん、ランダム展開生成ツールを使うのはシナリオづくりの前段階です。ランダム展開生成ツールを(何回か)使ってシナリオの土台を作り、土台の上に発想とゲームルールを素材としたシナリオ本編を書いていくのです。
上記の使い方をするには、ランダム展開生成システムには必要な要件がいくつかあります。
まず、何回か実行するものとしてプログラムツール化しておくのが最低限必要です。
かつ、ゲームマスターとしてプレイヤーに楽しんでもらうための、ゲームマスターの発想をのせられうる空白が、生成される土台には必要です。
最初に述べましたとおり、ランダム展開の妙味は、それ単体が面白いことではなく、ランダムに生じた展開と展開の間に生まれる「つながり」が面白くなることです。
そして、そのつながりを生むのは、ランダム展開をもとにプレイヤーとシステムとシナリオとの間を埋める役、それぞれに直接相対しているゲームマスターです。この、プレイヤー・システム・シナリオの三角形の中で、面白いつながりをいかに生めるかどうかがゲームマスターの腕前ですし、その役割の面白いところだと、僕は考えています。
ランダム展開の理想は、ゲームマスターを、ランダム展開のローダーとしてではなく、プレイヤーをもてなす存在としてとらえ、ゲームマスターにもセッションで楽しんで貰える助けをすることです。
そのためにランダム展開生成を作って使ってもらうなら、いいんじゃないでしょうか。