【小説】ある駅のジュース専門店 番外編「西科優仁に関するインタビュー」
西科優仁……ですか? ああ、はい。高校生の時、同じクラスにいました。よく覚えてますよ。結構、その……いろんなことやってましたからね。あの人。
ほら、あの頃って学校のルールを守ることなんかより、オシャレとか流行りとか、カッコ良さみたいなものを追い求めたい時期じゃないですか。だから先生に隠れてズボンの丈をちょっと長くしたり、髪型を刈り上げてみたりする人は結構いたんですよ。
でも西科は……もうそんな次元じゃない。堂々とやってくるんですよ。清々しいくらい。髪は染めるし、学ランのボタン付け替えるし。生徒指導の先生に怒られても言い返してましたね。具体的に何言ってたかは……僕の口からは言えません。それぐらい酷いことを、平気で先生に言える奴でした。
あと、あいつは、気に入らないクラスメイトをいじめたりもしてて。まぁ僕なんですけど。運動シューズ隠してくるんですよ。それで体育の時間に遅れたら、おい遅いじゃねぇかノロマ、なんて囃し立ててきて。先生に怒られてもまるで反省しないんです。ほんと、とんでもない奴ですよ。
え、高校卒業した後ですか? いやぁ、僕もそんな詳しくは知らないし、知りたくないんですけど……西科については、あんまり良い噂聞きませんね。
大学には行かずに働くって言ってたみたいなんですけど、就職、うまくいかなかったらしくて。なんか、空き巣に手を染めちゃってたみたいです。まぁ、あいつらしいと言えばあいつらしいですけどね。
その後のことは何も知りません。そろそろ、悪いことしすぎて捕まってるんじゃないですか? ……え、失踪? いなくなってる? いつからですか? ……二〇〇四年って……もう二十年も経ってますよね? えぇ.....何があったんだろう。気になりますね。
あぁ、いえいえこちらこそ。思い出話みたいな感じで楽しかったです。本日はありがとうございました。
〈おしまい〉
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