人間は生成AIに仕事を奪われるのか
ChatGPTってなんであんなに賢いの?
ChatGPTとかAIにわたしの仕事は無くなっちゃうのかな?
そんなふうに思っている人も多いのではないでしょうか。
今回紹介するのはこの本
著者は日本のAI研究で有名な東京大学の松尾研究室にてAI研究を行っている今井 翔太さん
AIやテクノロジーが今後どのように自分たちの生活に影響を及ぼすのか気になっている人に是非とも読んでいただきたい本です。
■ChatGPTは言葉を理解しているわけではない
どのようにChatGPTは情報を処理して、人間のように振る舞っているのでしょうか。
◎ChatGPTは言葉を理解している訳ではない
ChatGPTは言語モデルという技術で実現されており、その言語モデルを一言で説明すると「生成される単語・文章に確率を割り当てるモデル」です。
つまり、生成AIは文章を作成するとき単純な単語予測で文章生成をしているのです。
穴埋め問題を例にしてみます。
次の文章から( )の中に入る単語を考えます。
この文章1の場合、人間はおそらく3の「美味しい」だろうと考えると思います。
生成AIはこの「おそらく〜〜だろう」という「どの解答が正しそうか」の部分を生成AIでは他の選択肢を含めて確率で数値化して出力結果を決めているのです。
次の文章2では「農家の友達から普通とは違う色のりんごをもらった。」という前提条件が付帯されており「どの解答が正しそうか」という確率の数値が変わってきます。
この穴埋め問題は簡単な例でした。
しかし、ChatGPTなどの言語モデルを実現しているのは、辞書に載っている膨大な単語全てを選択肢とした正解単語の予測です。
ChatGPTはこのように自分が出力した確率に従って解答とした単語を補いつつ、次に続く単語に対する出力を行うという操作を繰り返します。
そうすることで、文章を最後まで出力できるのです。
つまり、単純な次の単語予測の繰り返しになります。
意外と単純な仕組みなのです。
◎膨大な量の文章を学ぶことで一般常識や文法構造を学んでいる
生成AIは大量の穴埋め問題を解く過程で世の中に関する一般的な知識や文法構造を学んでいます。
先ほどは、( )に入る単語の選択肢に「黄色い」というものがありました。
しかし、この選択肢が正解だと予想するには、「りんごは通常赤色である」という、文章には直接書かれていない一般常識的な知識が必要です。
つまり、穴埋め問題を解くには意外と高度な知識が必要なのです。
言語モデルはインターネット上で普段われわれが目にしているWebページの文章を大量に取得してきて、そこから穴埋め問題をつくっています。
膨大な量の文章を学ぶ過程で生成AIはこのような一般常識や文法構造を学んでいるのです。
■生成AIは人間の仕事を奪うのか?
では、生成AIは人間の仕事を完全に奪うのでしょうか?
AIの労働に対する影響の見方は、2013年と生成AI台頭後の2023年とでは全くといっていいほど変わっています。
◎生成AI登場前
2013年の生成AI登場前、影響を受けにくいとされる職業は、全体的に高度な判断力や創造性、数理的な思考、人との感情を重視した対話を必要とする傾向がありました。
影響を受けやすいとされているものとしては作業内容がほとんど決まっており作業内容に変化が生じにくいものとされていました。
これは2013年に発表されたオックスフォード大学のカール・フレイとマイケル・オズボーンにより発表された有名な論文「雇用の未来」で示された「機械化の影響を受けにくい職業と受けやすい職業」の図です。
医学者やエンジニアなど専門性が高く、職につくまでの年単位の時間を要する職業は影響を受けにくいことが読み取れます。
◎生成AI登場後の現在
しかし、生成AI登場後の2023年では2013年の見方とは一変しています。
「高学歴で高いスキルを必要とするような高い賃金の仕事であるほどAIやコンピュータによる自動化の影響を受けやすい」とされています。
これは2023年に OpenAI社とペンシルベニア大学が共同で発表した論文「GPTs are GPTS」で示された「AIの影響を受けにくい/受けやすい職業」をまとめたものです。
2013年とは打って変わって、会計士やエンジニアなど専門性が高い職業ほどAIの影響を受けやすいのです。
◎生成AIで代替できないことは頭を使わない簡単な作業
AIにとっては、人間がよく考えて行うような高度な作業は簡単である一方、人間が特に何も考えず簡単にこなしていることは難しいのです。
服を畳むことや食べ物を箸でつまむこと、スキップすることといった作業は人間には簡単です。
しかし、現在のAIにとってはこれは大変困難なことです。
一方、高度なアルゴリズムを書いたり、システムを開発するためにプログラミングをすることは多くの人にとって難しい頭脳労働です。
しかし、現在のAIはこれを簡単に行うことができます。
つまり、生成AI登場後の現在「AIの影響を受けにくい職業」とは肉体労働を中心とした職種と言えそうです。
◎生成AIは人間の労働を置き換えるのか
生成AIは、人間の労働を補助し、労働を楽にしたり、生産性をあげたりする「労働補完型」なのか
それとも、人間の労働を完全に置き換え、人間が介在する余地をなくしてしまうような「労働置換型」なのかという議論があります。
この本の中では、完全な予測は難しいとしつつも、
仕事の複雑さの度合いにより、人間が介在する余地が残るかどうかが決まってくるとしています。
現在すでに多くの仕事で生成AI導入がされています。
そして、それによる生産性向上の事例も多くあるようです。
この本では、カスタマーサポートやプログラマや営業職、研究者や教育、医師の分野にまで生成AIを導入した事例が紹介されています。
◎エンジニアの生産性は生成AIにより大幅に向上している
これはCopilotという生成AIによるプログラミング補助ツールを導入した結果生産性にどう寄与したかが紹介されているものです。
開発者の定性的な解答からもそうですし、生産性を比較する数値をみても生成AIがプログラマの仕事をサポートしていることがわかります。
このように様々な仕事が生成AIによって補完されるケースが増えてきそうですね。
■さいごに
生成AIの勢いは本当にすごいですよね。
これだけ話題になっていて、AIが自分の生活にどのような影響があるのか気にならない人の方が少ないんじゃないでしょうか?
気になった方は是非とも手に取ってほしいです。
2015年に発売された「人工知能は人間を超えるか」という有名な書籍もおすすめです。
こちらの本の note も書いていますのでよろしければ ⭐️