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【小説】ゼニん

おれたちが支配しているものってなんだろ。
おれたちニンゲンって霊長類とか言って他の動物・生物とかより優れているぜ!みたいな感覚だったと思う。
まあ人類も地球の歴史からしたらずーっと支配してきたわけじゃなかったんだけど、まさかあんな奴らに支配されてしまう時代が来るなんて…。


おれはとある研究者の端くれだったんだが、どういうきっかけだか一大プロジェクトとやらに参加することになった。
今の読者には新札発行されて間もない頃であると思うが、あれには実はある思惑があったのだ。
ぶっちゃけていうと旧札などを使った新たな人類、ゼ二んの開発であった。具体的な記述は避けるが、旧札にとある✕✕✕✕をかけて超縮小人工知能を搭載したサイボーグみたいなものだ。
おれが聞かされた話では、人口減少の対策の一環として、お金をヒトにすることで最高の人類を作ろうってな話ではあった。


そうして出来た最初のゼニん、10000の001、5000の001、1000の001の3人の教育係をおれは任された。
最初はまあいわば赤ちゃん状態なので何言ってんのかよく分からない状態ではあったが、すぐにおれたちの言葉を理解して大人並みの知能になるのに一週間とかからなかった。
正直これには脅威を感じた。
そしてこんな質問をしだした。
「人間ハドウヤッテ増エルノデスカ?ゼニンモモット増ヤシタイデス」
おれは答えに困ったが、すぐにネットか何かで調べて
「ソウデスカ…ナラ我々モ増エタイデス!」


最初はゼニんを少しずつ増やしていくプロジェクトであったらしいのだが、おれみたいな末端の研究者を使うぐらいだ。
予算的にも人材的にも不足していたのであろう、ケチんなよ、こんなところで…と思ったが、それはすぐに解決の方向へと向かった。
「我々モ研究ノオ手伝イヲシマス」
と自分で自分たちの開発を推し進めるようになった。


それからの開発のスピードは凄まじく次々と今度は小銭たちをゼ二んにし始めた。
ただこれだと今のスピードなら新札までゼ二んにしかねない。
さすがのおれも懸念して
「おいおい!そんなことしてたら、今度は…」
「大丈夫デス!ナラ今度ハ逆二人類ヲ銭二シタライイノデス」
「えっ?今なんて?」
「デハ早速貴方ヲ人カラ銭ノ第一号二シテアゲマス」


というわけでおれは一円玉になった。
一応配慮として
「マタ必要二ナレバ戻シテアゲマスヨ」
とのことだが、そんなものは詭弁であろう。
今も次々と人類がまさしくゼ二んに取って代わられる現在の状況を見ると…。


完。


この小説の元になった以前に書いた小説です。よかったら、一緒にお楽しみください。👇

これも以前に書いた小説です。手前味噌になりますが、自分の中で一番スキを貰えた小説になります。よかったら、ご一緒にお楽しみください。👇


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