【毎週ショートショートnote】インドを編む山荘「国編み物語」
祖母は私が物心ついた頃にはいつも編み物をしていた。
だが『その時』の祖母は鬼気迫る勢いであった。
「こればっかりは私の手には負えないねえ…」
というと祖母は長い間帰っていないという実家の山荘へと向かった。
幼い私も何か『見ておかなくては』という使命感のようなものに駆られていた。
祖母の実家は代々資産家の家系で、その山荘も別荘の一つであった。
「今回の依頼はあの『インド』だからねえ…」
と、つぶやくと山荘自体が揺れて窓の外を見ると、何やら山荘に腕が生えて巨大な糸と針が現れて編み物を始めた。
「幼い頃、連れていってもらったインドがこんなところで役に立つなんて…ねえ、母さん…ガンジス川…懐かしいなあ…」
と、それから何ヶ月も山荘に泊まり込み
「できた…」
と言った頃、
「今度は私が…」
と言って山荘になった。
そして、今現在、母さんが
「やれやれ…今、首相官邸から連絡があったよ…」
と呆れ顔で
「『この国』の編み直しかァ…」
と言って山荘へと急いだ。
完。
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