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セックスなんかしたくない3
毎日挿入練習をしていたが、彼に最後通告をされてから全く性欲が湧かず、挿入練習がものすごく苦痛になった。
これまでもなけなしの性欲はあった。
練習していて、「あっこれ気持ちいいかも」と感じることが増えたし、生理の流れに伴って排卵日前後や生理直前は性欲にブーストがかかっていた。
が、最後通告をされて。
プレッシャーに負けたのか、性欲が湧かなくなってしまった。
生理周期に合わせて性欲が増減していたが、それすら感じなくなった。
もう本当に、練習もしたくない。
いっそ毎日練習をやめよう。まずは2日に1回にしよう。
そう思って練習しない日を増やしたら、ものすごくホッとした。
想像以上に心の負担になっていた。
彼と別れたら、きっと私は
「好きなのに別れるなんて嫌だ」
という心苦しさと、
「ああ、これで挿入も、挿入練習もしなくて済む」
という安心の板挟みになるのだろう。
現状は私が思う以上に、私にとって苦しかったのだ。
彼は「あんまり思いつめすぎないで」と言ってくれた。
でも。できない現状を打破したくて頑張っているし、前進していないわけじゃないのに、最後通告をしたのは彼だ。私が出来なくて思い詰めているのは、彼との別れが嫌だからだったのに。頑張ってきたのは彼と一緒にいるためだったのに。好きなことをする時間も削って、毎日1時間かけて練習して、何もない休みの日は1日2回挿入練習して、ちょっと寝不足になったりもしたぐらい頑張っていたのに。どうせ別れるならもう頑張りたくない。限界のようだった。
解放されたくて、もう挿入のことを考えるのをやめたい。
でも仲良しカップルや、小さい子連れの親子を見るたびに、
「ああ、この人たちは私のように挿入できないことで悩んだりしていないのだろうな」
と勝手に悔しくなってしまう。
妊婦さんや、命がけで出産を乗り越えたお母さんを尊敬する気持ちはある。同時に、「この人たちに私の苦しみはわからないんだ」と勝手に惨めな気持ちになってしまう。
ただし、彼と別れても、この問題は誰と付き合っても、きっと付き纏う問題なのだ。
付き合う前から「貴方のチンコはSサイズ? Lだと私、挿入できないかもしれないんだけど……」なんて言いにくい。せめて性欲が弱い人を探すしかないのか。
このことが「別れればいい」で済まない部分なのだ。別れても次また同じことになったら? を想像するだけで不安になる。また想像で不安になっている。
彼の求めに応じられれば、それが一番ハッピーエンドなのに。
心も体も理屈では動かない。