【農業・芸術・食をテーマに3ヶ月でヨーロッパ6カ国(11)】 イタリア-トリノ 馬6匹とシャーマンとWWOOF(後半)
「農業」「芸術」「食」をテーマにヨーロッパを6ヶ国周ったシリーズです。
イタリアトリノ近郊で馬のお世話をしながらシャーマンの人と出会ったWWOOFのお話、後半です。(前半はこちら)
今回は、仕事内容や馬の事、シャーマンの方のイベント等に関して書きます。
〈仕事内容〉
・朝一で馬小屋の掃除と餌やり
・裏山の枝切りと整備(馬が自由に駆け回れるように)
・イベントに向けて、会場の掃除や設営
・イベント時の食事準備
・夕方は、馬に再度餌やりと、庭の植物へ水やり
(↑家の裏の坂を少し上がったところにある馬小屋)
(↑馬小屋の中の様子 小屋の中と外にある糞を回収して新しい藁をひく 馬がしているマスクは虫除け用)
(↑小屋の横は山になっていて馬が自由に動ける)
馬の餌やりは、晴れていれば山の中で行います。基本的に動物は一箇所に留まらず動き回りながら餌を食べるので、干し草を何箇所かにまとめて置いていきます。たまに山に登ってくるのを嫌がる面倒臭がりな馬もいました。
(↑山の中 木を切って、山を一周出来るよう道を作った)
〈馬6匹について〉
今まで深く動物と関わりながら生活したという経験は実家の犬くらいだったので、馬という動物に対しても漠然としたイメージ(大きい、賢い、筋肉質)しかありませんでした。けれどここでの生活の中で、馬1匹ずつの個性や性格の違いがすごく感じられて面白かったので紹介します。前回の記事でも少し触れましたが、ここの馬たちは皆、以前の飼育環境等に問題があり保護されてきた馬たちです。何匹かの生い立ちを教えてもらいました。その生い立ちも知ることによって、馬のとる行動の意味を更に理解でき興味深かったです。
・ジジ(♂)
大きな体、元々レース用の馬として飼われおり、常に走ることを強要されてきたのでゆっくりすることが苦手。若くして去勢されたので、雌馬との距離の取り方が分からない。いつも狭い小屋の中で定位置のバケツに排泄をしないといけなかったので、急に自由な環境になってもトイレの仕方が分からず、餌の上にしてしまうことがある。
(↑ジジ)
・タート(♂)
大きな体に黒くてふかふかの毛並み。大人しく動くのが嫌いで、食い意地が張っている。昔、ふれあい牧場的なところでずっと人を乗せる仕事をしてきたため、うんざりしてもう人間と触れ合いたくないと思っている。そのため撫でても無反応だったり、すぐに離れていく時がある。感情を読み取りにくい。
・ニキ(♂)
タートといつも一緒にいる。人間に興味がなく心を開いてない様子。痩せていて毛並みが不揃い。以前はお金持ちの趣味として飼われていた。そのため飼い主が会いに来るときぐらいしか外に出る機会がく、それ以外は狭い小屋で過ごしていたため、背中の筋肉が未発達で今でも運動嫌い。餌やり時も自発的に山に登ってこない。
(↑左:ニキ 筋肉が少ないため背中が骨ばっている 右:ジジ)
・ソフィオ(♂)
育ち方に問題があったのか16才なのに6才の頭脳しかない。体がムチムチしている。撫でてもらうのが好き。いつも犬のココロと喧嘩をしている。構ってもらえないとストレス感じて噛んでくる。
(↑ソフィオ)
・ナナ(♀)
6匹の中で妹的存在。いつも小屋の外にいる。毛並みが黒く綺麗で、中東の馬種とのハーフなためエキゾチックな雰囲気。おてんばで人懐っこく、毎朝頭を擦り付けて挨拶してくれる。美人。
・デミ(♀)
繊細で月の満ち欠けの影響が体に出やすい。胃腸が弱く体にまだら模様が出る時があり、そのときは消化に効くタンポポをメインにした特別メニューを一人だけ食べる時がある。ソフィオが彼女の癇に触るようで目の前にソフィオがいると噛む。他のオスからも恐れられる影のボス。私には、流し目で美人な細めの黒人女性にだんだん見えてきて、いつも「デミ様」と呼んでいた。
(↑デミ 少しお腹にまだら模様が、、)
初日に馬に会った時は、「人間」に対しての「馬」というカテゴリーでしか見ておらずそれぞれの見分けもつかなかったけれど、日々接して自分の視点を変えることで、今では写真を見返すだけでどの馬だか分かるようになりました。「人間と馬」という関わりだけでなく、人間1人も馬1匹も、視点を変えれば、同じように個々として捉えることが出来るんだなと感じる経験でした。
この「視点を変えて視ること」は、人間同士の中でも忘れがちだなと感じます。海外にいると、個人として接してもらう前に「日本人」として見られるし、そこ止まりでしか見てもらえないときも多々あり悲しい思いをするときもあります。視点を変えて視ることは、小さな視点で個々を理解するときも大きな視点で文化背景などを理解するときも大事なことだなと、動物と触れ合うことで思いました。
〈シャーマンのイベントに関して〉
今回滞在した先は、ホストのエマが主催で馬と触れ合ったりするイベントを開いたり、ゲスト講師を呼びワークショップを開いてもらう場所でした。
私が滞在した期間中は、ペルーからシャーマンの女性が来てケチュア文化を伝えるワークショップがありました。
ケチュア文化とは
ペルーを中心とする中央アンデス地帯の高地に住むケチュア族によって築かれた文化。スペイン人の南米到達以降、植民地支配や大農園への組み込みなどの影響を受け辺鄙な土地へ追いやられたが、現在も小さなコミュニティとして独自の文化を持っている。太陽信仰や呪術振興などの伝統的な宗教とキリスト教が混ざっている。
エマからシャーマンの人が来るときいた時は、全く想像もつかずびっくりした反面、怪しいと少し冷めた目で疑う気持ちもありました。
けれどシャーマンであるラウラとそのパートナーであるマッシモ(詳細は前半を)に実際会い、ワークショップに参加したらすごく楽しく納得のいくものでした。ワークショップの内容は、ケチョアの織物に込められる意味や、お祭りの時に踊るダンスの意味を実際に踊りながら教えてもらうものでした。「シャーマン」や「呪術」と聞くと怪しさを感じたり自分と離れたものな気もしますが、実際話を聞いてみるとその土地に根付く伝統や宗教であって、その環境や歴史と結びついて発展したものだからすごく自然なものであるし、「シャーマン」と呼ばれる人は、その土地のことをよく知り、生きていく知恵や伝統を皆に教える人でした。
(↑夕飯の時にラウラが教えてくれたケチュア語 不思議なものでケチュア語と日本語は発音がすごく似ているそう)
普段では味わえない文化や人たちと関わることができたWWOOFとなりました。
これでイタリアでした3ヶ所でのWWOOF体験は終わりです。
この体験や今いるイギリスの生活を通して、文化や宗教の発展とは、土地の性質や気候など環境にすごく結びついていて、その中で人がどう生きて来たかということだとよく理解できるようになって来ました。文化や宗教的イベントだけを「型」として表面的に真似してもダメだなと。またそういう視点でも記事をまとめていきたいと思います。