【農業・芸術・食をテーマに3ヶ月でヨーロッパ6カ国⑦】 イタリア-プーリア オリーブ畑でWWOOF(後半)
「農業」「芸術」「食」をテーマにヨーロッパを6ヶ国周る中で、イタリア3ヶ所でWWOOFを体験しました。
その中の1つ目、南イタリア、プーリアの半自給自足スタイルの家庭でのWWOOFについて後半の記事です。
前半の記事はこちらをどうぞ。【農業・芸術・食をテーマに3ヶ月でヨーロッパ6カ国⑥】 イタリア-プーリア オリーブ畑でWWOOF(前半)
今回は、詳しい仕事内容と食事について書きます。
〈仕事内容〉
・暖炉の掃除、薪運び(毎朝)
薪は庭のオリーブの木を剪定した枝、水分が少ないのでよく燃える
・庭の草抜き(広大なため、大変)
・畑の準備(耕したり、灰をまく)
・ぶどう畑を次の収穫シーズンに向け綺麗にする
・アグリツーリズモに使用する部屋を掃除
・作ったワインを瓶に移し替える
週5日、1日6時間労働。朝9時から夕方5時までで、そのうち2時間昼休み。私たちがこの家庭でWWOOFをした時期は、3月の半ばで畑は基本的に秋の収穫シーズンに向けての準備期間で、派手な仕事はあまりありませんでした。
(↑石畳の間の雑草をひたすらスプーンで取り除く 猫が遊びに来る)
(↑草抜きをすると、そこから出てきた小さな虫を食べにニワトリも寄ってくる)
(↑畑に暖炉の掃除で出た灰を置いていく 白い山のような物が灰)
(↑ワイン用ぶどう畑 ぶどうの木は、成長が早く、毎年収穫が終わると細かな枝を落とされるが秋までにまた枝が伸び沢山の実をつける この写真の時期は新たな枝が芽吹いてくる頃)
(↑ワインの詰め替え 沢山の量の自家製オーガニックワイン)
〈食事〉
この家庭では基本的にホストが作ってくれる。
南イタリアの郷土料理を食べさせようと、毎回いろんな料理を出してくれた。
・オルキエッテ(プーリア地方の耳たぶの形をしたパスタ)
・ブラッターチーズ(水牛のモッツァレラ)、スカモルツァ(ひょうたん型のチーズ)など沢山の種類のチーズが必ずある
・スズキのムニエル(お腹にレモンを詰め込んで焼く)
などなど、どれも本当に美味しい料理を出してくれました。ただ、毎回小麦粉!パスタにパンを合わせて食べるし、野菜には小麦粉をまぶして焼くし、日本人にはお腹がとっても苦しくなります。チーズは沢山種類があって、どれも安価でとても美味しいです。食事には必ず、自家製ワインが赤白両方出ます。ものによっては発酵がすすんで、ビネガー風味の時も。微発泡で水で薄めながら飲んだりもします。日本でワインというと、なんとなく気取ったイメージが付きまといますが、こんなに庶民的で手作りのオーガニックワインが日常的に飲めるのは、なんだか体にいいような気がしました。パスタを家で手打ちするところを見たいと期待していましたが、家で作る機会はありませんでした。手打ちパスタを売っているお店が多いので、わざわざ手間をかけて作ることは少ないそう。
(↑スズキのムニエル)
(↑ある日の昼食 パスタとパン粉をまぶして焼いた野菜 もちろんパンはテーブルに直置き)
とっても美味しいですが、盛り付けや食事のバランス等はやはり日本人の方が気が利いている感じでした。
そして何と言っても困ったのは、食事の時間。基本的に日本と比べると昼食も夕食も始まるのが遅いです。お昼は、必ず1時過ぎ、もっと遅いと2時から。夕食は、8時過ぎから、遅い時は9時過ぎから。朝から畑仕事していると、ご飯がなかなか始まらないのはきつく、夕食を食べたらすぐ寝るというのもお腹が苦しかったです。
余談ですが、ここでは、WWOOFer(WWOOFをしている人)が最低1度は料理をホスト家族に振舞うという決まりがありました。私たちは、わかりやすい日本食の巻き寿司や唐揚げを作って、ホストにも喜んでもらえました。その夕食時に、アメリカ人のWWOOFerが作ってくれた食事がサンドイッチでびっくりしたという話題が出ました。なんだか国々の食に対する意識の違いを感じるエピソードでした。
朝から働くといっても夕方5時になる前に、ティナに「BASTA!(バスタ)」(ストップ、やめの意味)と言われ、リラックスして散歩でも行きなさいと言われ、6時間働かない日も多かったです。
2時間ほどあるお昼休みには、庭で採れたオレンジを食べたり、エスプレッソを飲みながら読書したり、スケッチをして過ごしたりと、自然の中でゆったりとした時間を過ごせました。
(↑庭で採れたオレンジ いろんな種類があっていつでも食べられる)
(↑空いた時間はスケッチをして過ごす 動物もみんなのんびり)
ある晩ティナに、農法やこだわりなど農業について尋ねていたら、「ここは気候や土などに恵まれているから、頑張らなくても勝手に育つ」と言っていて、農業を“勉強する”というスタンスの私にはびっくりでした。
南イタリアというと、スローライフとよく聞きますが、短いながらも実際生活して思ったのは、その土地に合わせてナチュラルに過ごしているだけということでした。
お昼休みが長い(夏季は12時から4時間ほど休む)のは、お昼間暑すぎて働けないからなだけで、その分朝早くから働いていたりして、彼らに言わせれば、環境に合わせているだけ。あんまり頑張らなくても作物は育つし、必要なら働くけど、それ以上は別にいいじゃないというだけでした。問題点をいつも探し今よりも改善しようという向上心が強い日本人とは違い、今あるものに満足し、それ以上目指さないイタリア人の気質も相まって、日本人からしたらスローライフに見えるだけで、なので、スローライフに憧れて、ただ型としてイタリアを真似しても性格も環境も違うので、きっと日本には根付かないだろうなという感想を持ちました。
その他に、ここの生活でいいなと思ったことは、家庭で育てたオリーブの木を薪にして、それを燃やしてできた灰を畑の土を整えるのに使うという、暮らしの中で無駄のない、いい循環ができていること。そして、家で作った野菜を食べ、自分たちで作ったワインを飲むということが、スーパーで高品質bio商品を買ったり、デパートで高級ワインを買って飲むよりも体にいいことなんだろうと身をもって感じることができました。