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【食意識について考える】 グラスフェッドの牛肉の味から考えたこと

先日、グラスフェッドの牛肉を食べました。
学校のバイオダイナミックトレーニングの一環で見学に行った、Model farmというオーガニック農園で購入したお肉です。

私は今イギリスの学校農園でFarmを働きつつ学んでいて、日本人との考え方の違いや文化の違いを感じることが多いので、今回はグラスフェッドの牛肉の味の感想とあわせて、"Farm"という視点から見えたことを書きたいと思います。

"Farm"の定義

"Farm"(ファーム)と日本語で書かず英語で書いている訳は、日本人に対してピンとくる訳がないからです。単純にFarmを日本語訳すると「農場、飼育場」。ですがイギリスで"Farm"と言う時は、野菜や果物を取れる畑に加えて牛や豚、鶏など動物もいる農場を指し、そこで働いている人はFarmerと呼びます。ちなみに野菜や果物を取る畑だけを指すと"Garden"と言い、働いている人をGardenerと呼びます。

私も実際ヨーロッパ圏で生活をして、初めてこの認識の違いが分かりました。というのも、日本人には馴染みの薄い「畜産・酪農」という文化。元々日本は「お米」「野菜」「魚」が中心の食文化で、家畜を育ててお肉を食べるという文化はほとんどなく、お肉に関しては狩猟で得たイノシシなどを食べるという食生活を送ってきたので、後に海外から入ってきた牛や豚などを食べる肉食文化に関して、今では当たり前の事にも関わらず認識が薄いなと感じます。

グラスフェッドの牛肉の味

冒頭でグラスフェッドの牛肉を食べたと書きましたが、東京で生活してた時は牛が何を食べどう育つかは、はっきりと分かっていませんでした。牛肉の赤身肉は安価でヘルシー、霜などの入った国産の牛肉は高価くらいのイメージでした。「グラスフェッド」という認識も最近になってしっかり分かりました。

グラスフェッドの牛肉とは?
"grass fed" つまり「草の餌」という意味で、グラスフェッドの牛というと、ストレスのない放し飼いで良質の草を食べて育った牛という定義になります。日本のスーパーでもたまに「グラスフェッド」という表示は見られますが、海外から輸入した安い赤身肉と捉えてる人も多いかもしれません。赤身肉でも放牧されずに餌だけ与えられ大量生産用に飼育されているものもあるので、そこはちゃんと違いを認識しておきたいところです。

味の感想は、「わー!臭い!羊肉と同じ香りがする!」です。
ちなみに羊肉に関しても日本ではジンギスカンで食べるくらいで、羊肉の味そのものはよく分かっていなかったです。イギリスは、羊大国。羊肉や羊の乳からできたチーズやヨーグルトも沢山売っています。イギリスに来て、せっかくだからと羊肉をドカンとオーブンで焼いて食べてみたことがあります。とても美味しかったですが、とても癖が強かったです。油の匂いが独特。ちなみに羊のヨーグルトもお肉の油と同じ匂いがして、私は牛乳のヨーグルトの方がいいなと思いました。
そう、羊が少し癖があるなと感じるのは、日本で食べて来た牛肉と比べているから。グラスフェッドの牛肉を食べる前も、久々に牛肉食べれるな〜くらいの気持ちで食べました。でも口にしてびっくり!味や香りが羊肉を食べた時の癖に似ている!その後よくよく考えて、草食の動物の味はそもそもこうなのかもしないと思いました。もちろん食べ慣れれば美味しく感じます。

日本の牛肉と肉に対しての意識

では日本の牛は何を食べているのか?もちろん牧場にもよりますが、広い土地が必要な生産性の悪い放牧スタイルのグラスフェッドは少ないのが現状です。大多数は、狭い家畜小屋で生産性を上げるため運動をさせず早く肉がつく穀物や飼料を与えるのが多いのが現実。ちなみに霜降り肉を作るためには、ビールを飲ませたり故意にビタミンAを欠乏させたりしています。この状態は牛にとってはとてもストレスがかかり、はっきり言って病気の状態。私はベジタリアンに近い食生活ですがお肉も好きでたまに食べるスタンスで、肉食の人を非難する気もありません。ですが、動物に対して生産性だけを求める飼い方や、病気に近い状態の肉を高級品と扱うことに対してはいい気持ちにはなれません。ちなみに海外の人から言わせると、日本の霜降り肉の文化に対して「病気の肉を食べることや、そういうお肉を推進している風潮は頭がおかしい」と言われます。肉食がどうのとか、動物愛護がどうのという意見は沢山ありますが、単純に考えて、自分が口にするものは健康に育ったものがいいと思います。お野菜に対しては意識が少し出て来た風潮ですが、お肉に対しても産地だけでなくどんな環境でどのような状態で育ったものか意識をもう少し持ってもいいのかと思います。ですが、スーパーでそれを知るのはなかなか難しいのが現状。小売の専門店で説明を受けながら買うことができればいいのですが近年どんどん少なくなって来ているのが現実。みんなのベース意識が上がって、そいうい情報が得られないと買わないという需要ができれば売り方は変わってくるはずだと思います。利便性を求める現状はこれからも変わらないと思いますが、それだけを求める時代はもう終わっていると思います。
日本の中でもしっかりとした考えの生産者は多いので、まずはそういうところに見学に行ってみるのもいい機会になると思います。私は以前、熊本の玉名牧場というところに見学に行きました。自分が実際体験したことでしか考えは変わらないと思うので、色々見てみるのはおすすめです。


Farmer から見た日本の食文化

酪農大国イギリス。そんなイギリスのFarmerである私のボスからこんなことを言われます。「なぜ日本はクジラを食べるのか?」信じられないといったニュアンスでいつも話題にされます。確かに私もクジラは2回ほど口にしたことがあります。けど頻繁に食べるものではないし全く意識していませんでした。捕鯨が海外から非難されることは認識していましたが、日常的に自分の問題として考えておらず、ボスに対してなんて返事をしていいか分かりませんでした。捕鯨問題などは日本人として勉強していかないといけないなとは思いつつ、私が感じたのは、「クジラを食べる」ことに対しての、日本人の私とFarmerであるイギリス人の彼の捉え方の差。

今Farmを学んでいて思うことは、Farmとは、肉も野菜も自分が食べるものは自分で世話をして作り出すという文化。牛の餌になるための牧草を育てること、動物を放すための土地をいい状態に管理することもFarmの仕事の一つ。そして飼っている動物の糞を使って堆肥を作り、いい野菜づくりに役立てる。全部が循環することがいいとされています(特にバイオダイナミック農法の考え方では)。だからFarmerであるイギリス人の彼は、自分が育ててもいない、知能が高く人間と同じ哺乳類であり自然界の中で大きな存在のクジラをわざわざ捕まえて食べるなんて理解ができない。
それに対して、もともと「稲作」「野菜」「魚」の食文化の日本。魚やお肉に関しては、自分たちで育てたものという意識より「大地の恵みをいただきます」という自然界からもらうという認識が強い日本人。なので、クジラを食べることに対して、そこまで大きな意識を持っていない人が多いのではないだろかと感じました。
多分彼がクジラを食べることに関して持つ違和感は、日本人からしたら、例えばイルカや犬や猫を食べる違和感に近いと思います。

まとめ

グラスフェッドの牛肉を食べて、関連して考えたことをまとめてみました。イギリスのFarmの在り方やヨーロッパを真似するとかではなく、日本人として日本の環境や歴史を見直して、私たちの体や思想に合う「食」について考えることは大事だと思います。利便性を求めて早いスピードで回る社会ですが、再度無意識で行なっている生活を少し見直しすために立ち止まることも必要だと感じます。

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