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息子の靴下を編むということ

今年に入ってから「手編みの靴下」を編み始めた。
その前にやった編み物は覚えていないくらい前。何を編んだのかも覚えていない、きっと20年以上前のことだ。
実家から引っ張り出してきた編針は2年7組と書いてあるところをみると、中学生の家庭科で使ったものかと思われる古い棒針。30年モノである。
できるのか、私に。という少しの不安もあったが、ダメならやめればいいだけ。ダメもとで挑戦することにした。

きっかけは、編み物が得意な幼稚園ママ仲間からのプレゼントの「手編みの靴下」だった。

下の子の2歳のお誕生日プレゼントとしてもらったのだが、今まで見た靴下の中で、一番素敵だった。色も柄も形も。本当に本当に素敵で、自分も挑戦したいと思ったのである。
まずは、毛糸の説明を受ける。
なんと、靴下専用のオパールという毛糸で編んでいくだけで柄が勝手に出てくるという優れもの。だが、1玉2000円ほどするという(高っ)靴下の毛糸に2000円かぁ~普段は3足で499円の西松屋靴下を愛用している息子に2000円の靴下毛糸かぁ~
私にでも素敵に編める、魔法の毛糸なのかなぁ~と半信半疑ではあったが、毛糸コーナーで大量の毛糸の中から気に入ったオパール毛糸を1つ選んだ。

編針も、輪針というワイヤーが付いている便利なものを買うことになって、最初に揃えた道具や材料で5000円以上使ったような気がする。
靴下一足に使う金額ではないのは承知の上だが、その時は自分が何かに突き動かされている感覚すらあった。ノリで形から入っちゃったとも言うかもしれないが。

あれは忘れもしない、今年の1月の初旬。
幼稚園は冬休み。
編み物が好きなお母さんたちが集まって編み物をする会に参加させてもらう。そこで、わかりやすく教えてもらうが、一回で覚えられるわけもない。
すると、編み方の動画があるということがわかる。
その後もYoutube動画を繰り返し見ながら、何とか一足完成させた。
かかった日数は約10日間。時間は不明。
手先は器用な方だと自負していたが編み物に関してはブランクがありすぎて、完全に初心者なのに、高い毛糸のおかげで本当にかわいく出来上がった。

やればできるじゃん、私。

達成感でいっぱいになっていると、息子が大喜びで靴下を履いて見せてくれた。
気に入った!かわいい!嬉しい!ありがとママ!すごいねママ!というような類の言葉をたくさん言ってくれたのだ。
喜んでくれた息子を見て、私もうれしいし、頑張って良かったと思うし、すごいねと褒められて、私の中の承認欲求が満たされていくのを感じた。

編めば必ず進む。そして、成果が一目でわかる。
デザインやライティングのようにPCに向かっていても気分が乗らなかったり集中できないと完成しないようなものとは違って、努力は必ず報われる世界。
それがきっと気持ちがよかったのだと思う。

正直、子育て中はだいたい朝6時~夜8時までは子どもたちの相手があり、5歳と2歳のそれは驚くほどのマルチタスクである。
みんなでご飯を食べている最中に「ウンチ出たと」言われて、ウンチや着替えのお世話をしたり、直後にみそ汁を床にこぼされて拭いたり、風呂に入れば遊びながらケンカするお子達の仲裁と体を洗うお手伝いがあり、風呂から上がれば、着替えからの歯磨きしながらもう一人には絵本を読んだり、それはもうバタバタのドタバタ。
寝る時間までにやらなきゃいけないことが山積みである。
子育て中のママはみんなマルチタスクプレイヤーなのだ。
なのに、その仕事に対して確かな成果を感じにくい。幸せを感じる瞬間もあるにはあるが、とにかくいかに効率よく進めるか、手抜きできるところをいかに抜くか、段取りで頭がいっぱいだ。その上、不安になることだってある。
当然、編み物なんぞやっている場合ではない。

だからこそ、なのか、子どもが寝てからの数時間、食洗器と洗濯機をフル活用しながら編み物に没頭するのがよかった。
編み物中は、夫もほぼ話しかけてこない。
私が集中しているのが伝わっているのだろう。するとあっという間に2時間くらい経ってしまう。
それも、スマホをいじって無駄にした2時間とは訳が違う、息子のことを想い靴下を編むための2時間。飲まず食わずで集中2時間。
なんと豊かで実益のある趣味なんだろう。子どもが生れてからこんなに自分時間に没頭したことがあっただろうか。
少しの眼精疲労と脳内スッキリになるのが気持ちよくなって、靴下を編むというだけのことなのに、
「精神的にも時間的にも経済的にも、息子に靴下を編む余裕のある私」という気持ち良さに酔った。しかも、猛烈に気持ちよく酔った。

靴下を編む人のことを「ソックニッター」と呼ぶ。
そして、時間も忘れて編み物に没頭する状態を「ニッターズ・ハイ」という。これは長距離ランナーが経験するランナーズ・ハイのようなものらしい。
まだ、私は、「ニッターズ・ハイ」の経験はないのだが、編み物が面白くてすっかりはまってしまった。
今では5作品を完成させたところ。

私のような庶民的な金銭感覚の持ち主には、息子の靴下の毛糸が2000円なのはどうしても違和感しかなかったので、100円ショップのソックヤーンも編んみた。
現代の100円ショップは、控えめに言っても凄いです。
ソックヤーンが一玉100円です。充分かわいい靴下編めます。

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ほら、柄もカワ(・∀・)イイ!!

しかし、ソックヤーンが一玉100円だと、ダメなことがある。
安いので、買いすぎるのだ。この色かわいい!コレもかわいい!と、ポンポン買ってしまう。と同時に、深みにはまる気もする。
お高いオパール毛糸なら、迷いに迷って一つだけに絞るのに。


一人前の「ソックニッター」を目指すのもいいけど、優先順位も考えなくては。

ほら、家の中がこんなにも散らかってるではないか。

春休みは、衣替えと断捨離と掃除に集中しようかな。
どうやら「靴下編み」も、沼のようであります。

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