マダニに噛まれた話
昨年の5月の末、たまたま実家の家庭菜園の畑で小さなクワガタを見つけたので、早い子達は、もう出ているんだな~と思い、幼稚園が隣接している山に入った。というくらいには、私は、クワガタ探しが大好きである。
前シーズンに成虫を見つけた木に的を絞り、目視。
探し方は、ひたすら目視。
服や靴が汚れないように、子ども達に危険がないように注意しながら、ただただ木々を目視する。
少し寒かったり天気も悪かったりしてその日は結局見つからずに、日を改めることにした。
そんな普通の日常を過ごしていた。
はずだった。
帰宅して、いつものように夕食を終え、お風呂に入った時のこと。
子どもとの入浴なので、ワイワイと楽しい時間のはずだった。
子どもの身体を洗って入水させ、私も自身の体を洗い髪を洗いさぁ入浴!というまさにその時、私の太ももの内側に黒い点を発見した。
ちょうど、膝の上10センチくらいの内側で肉割れしているスタート地点くらいのところ。
何かのゴミでもついているのかと、洗い流すが、流れない。
こすっても取れない。
あれ?刺さってる?
黒い点が、柔らかな太ももの内側の表面に少し食い込んでいるような気もした。
あれ?
なにこれ?
その時点では痛みはない。
何かはわからなかったが、その不気味な黒い点が、何かの虫であることはわかった。
も、もしや、、、
これが、あの、噂のマダニ???脳裏をよぎる。
幼稚園では、子どもたちが森で遊んだ後には、頭にマダニがいないかチェックするように言われたことがあったので、その存在には何となく気が付いていたが、その正体を見たことはなかった。
が、何となく私が認識していた小さなマダニと、私の太ももにある物体のイメージが違ったのだ。
ピカピカに光ってる黒い点というか玉のような、サイズとしては、ミンティアとかフリスクくらいの大きさだったので、未知の何かか新種の可能性すら疑った。
というくらい、まさか、自分がマダニに嚙まれるなんて、、、全くの想定外。
野外では私は長袖長ズボン。日よけの手袋もするくらい肌の露出は少なかった。
だから、余計に怖かった。
不気味なその物体を自力では取れなかったため、浴室からリビングにいる夫に助けを求める。
髪も体もびしょ濡れ状態で、太ももについたマダニと思われる虫を取ってもらおうと
「ここ!パパ!!!取って!!!早く!!!」
不気味さと不安で、パニック寸前。
夫は虫が好きではないが、虫を殺すのはもっと嫌いなタイプのとても優しい人なので、いきなり風呂に呼びつけられて、太ももに刺さった虫を取れと言われ、動揺しているようだった。
ティッシュでふんわり取ろうとしても、頭なのか牙なのかわからない何かが、ガッツリ食い込んでいてなかなか取れない。
何度か試しているうちに、太ももの内側の肉が何度もつねられる痛みに耐えられなくなり、浴室はギャーギャーと大騒ぎ。
息子は何が何だかわかっていないのに、騒ぎ声で応戦した。
何度目の挑戦だったか、夫が「我慢して!」と言って、太もも肉をつねって、ブチっと引き離してくれた。私は、とても痛かった。
そして、夫が言った。
「うわー、なにこれ。気持ち悪い」
「ぐにょぐにょ動いてるぞ」
「あれ?潰れない。固い!」
もうこのあたりから、マダニという嫌な虫に噛まれたんだろうな、、、とは気が付いていたものの、さらにその不気味さが私を不安にさせた。
とにかく、つぶしても死なない虫が子どもたちを噛んだら大変なので、トイレに流すことにした。
マダニが去った後の私の太ももには、小さくて赤い点が2つ並んでいた。
風呂上りに、「マダニ 噛まれた」などで検索すると、出るわ出るわ、さっき私の太ももにいた黒い点と同じ虫の画像。それはそれは気持ちが悪いフォルムであった。
私の不安な気持ちにさらに追い打ちをかけたのは、感染症の情報だった。
マダニが媒介するウイルス感染症で「重症熱性血小板減少症候群」というのがあるらしく、最悪、死亡するらしい。
さらにマダニに噛まれたら、自分で取ってはいけないこと、頭が残ってはいけないので病院へ行って特殊な器具で取ってもらったほうがいいことなど、読めば読むほど怖くなる情報ばかり。
私の場合、夫が取ってくれたマダニは元気に生きていたので、頭や体の一部が食い込んでしまっていることはなさそうだった。
気になったのは、私の太ももへの侵入経路だった。
ムチムチの下半身がギリギリ収まる、遊びのないというかピチピチのジーンズだったため、足首からは入らんだろうと予測。
ネットで調べを進めていると、恐ろしいことが次々と判明した。
髪や服についたマダニは、柔らくておいしそうな場所を求めて体の表面を徘徊するらしい。
そこで、この辺かな~というあたりをカジるのだとか。
もう、考えただけで気持ちが悪いのだが、
一匹いるということは、頭とかにもいるのではないかな?とか、
もし、万が一、デリケートゾーンだったりした場合どうなってしまうんだろうとか、ありもしないことをぐるぐる考えてしまう。
マダニの被害にあって1週間は、メンタルもダメージを受けたし、その後遺症からか森へ入ることができなかった。
あれから10か月経って、私は生きている。
死ぬかもしれない感染症の疑いはなくなった。
だがしかし、また、クワガタのシーズンはやってくるわけで、そうすると体が勝手に森へ向かうわけで。
本当に困った。
大好きな彼には会いに行きたいけど、彼に会いに行くためには、森に身を潜めて近づいてくる野蛮な奴らに狙われる可能性があるのだから!
あぁ困った。
マダニよ。
こんなオバサンに嚙みついて、何が楽しいのじゃ。
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